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【検察側論告詳報】廿日市女子高生刺殺事件(2020年3月10日掲載)

2020/7/28 18:04

 ■検察側論告

第1 争点

 被告人に対し、各公訴事実記載の罪が成立することについては、争いはなく、証明十分。争点は量刑。

第2 刑を決める上で重視すべき事情

1 殺人、殺人未遂事件の中でも特に悪質な類型の事案であること

 本件は、女性暴行目的の殺人、殺人未遂事件。殺人事件の中には、さまざまな目的の類型の事案があるが、その中でも、女性暴行目的の事案は、極めて身勝手な動機に基づく犯行であり、殺人事件の中でも特に悪質な類型といえる。

2 結果が極めて重大であること

(1)北口聡美さんに対する殺人既遂事件について

 聡美さんは、なかなか子宝に恵まれなかったご両親にとって、待望のお子さんで、ご家族全員から愛された優しい女の子だった。当時17歳の高校生で、勉強やアルバイトなどに励み、友人からも慕われていた。被告人が捕まるまでの約13年間、毎年友人が聡美さんのお墓参りをしていたほどだ。このような聡美さんの命が、突然奪われるという取り返しのつかない結果が生じている。聡美さんは、帰宅しているところをたまたま見つかってしまったため被害に遭った。何らの落ち度もなく、誰が被害に遭ってもおかしくなかった。自宅でくつろいでいたところを突然襲われ、ナイフで何度も刺されたり、首を切り裂かれたりした聡美さんの恐怖や苦痛、無念は「察するに余りある」という言葉では言い表せない。

(2)ミチヨさんに対する殺人未遂事件について

 ミチヨさんは、ナイフで何度も刺され、病院搬送時には、手首では脈が測定できないほど血圧が下がり、さらに心タンポナーデを起こしていた。瀕死(ひんし)の重傷。搬送先の病院にたまたま、専門医がいたために緊急手術を行うことができたが、専門医のいない病院に搬送されるなどして治療が遅れたら、心臓が止まって死亡していた危険が非常に高かった。解離性健忘を発症するほどの強いショックを受け、現在も治っていない。ミチヨさんの感じた恐怖や悲哀、絶望感は他人の理解が及ばないほど強度なもの。犯人を逮捕するため、ミチヨさんは、思い出したくもない事件の記憶を思いだそうと治療を行った。事件後もさらなる精神的負担があり、ミチヨさんについても何らの落ち度も認められない。

(3)残された家族の思い

 愛する聡美さんを突然失い、ミチヨさんにも大けがを負わされたご家族は、被告人が捕まるまでの約13年半という非常に長い期間、さまざまな思いを抱え、苦しんできた。

【聡美さんの父忠さんの供述・心情の意見陳述】

 「犯人はすぐには捕まらず、13年半がたちました。長かったです。本当に長い時間でした」「明日起きたら夢だと分かるかもと思って何とか寝ようとしても寝られず、そして朝になり、明日こそは夢から覚めるかもしれないと思い、夜、また寝ようと頑張る。毎日がその繰り返しでした」「お姉ちゃん、守れずにごめんなさい」「守ることができないでごめんなさいという気持ちを持ち続ける必要がありますし、持たないと、父さん失格になってしまいます」

【聡美さんの母の供述】

 「13年以上たった今でも、聡美が帰ってくるんじゃないかと、帰ってきてほしいという思いもあって、玄関には、聡美のスニーカーが置いてあります」

【聡美さんの妹の供述】
(ここまで 1317文字/記事全文 3206文字)

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