トピックス

勝訴の原告団、広島県・市に控訴断念を要望 「黒い雨」訴訟

2020/7/30 12:14

市の担当者(手前)に控訴断念などを求める文書を手渡す高野団長(30日午前9時40分)

 原爆投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」を巡る訴訟で、国の援護対象区域外の原告84人全員を初めて被爆者と認定し、広島市と広島県に被爆者健康手帳の交付を命じた広島地裁判決から一夜明けた30日午前、原告団と弁護団は市役所と県庁を訪ね、控訴を断念し、速やかに手帳を交付するよう申し入れた。

 市役所には原告たち12人が訪問し、市原爆被害対策部の杉浦信人部長たちと面会。控訴の断念や手帳の交付とともに、判決に従って被爆者援護法が定める審査基準を改訂し、国の援護対象区域外で黒い雨を浴びて健康被害を生じた人を早期に救済するよう求める文書を渡した。

 原告団の高野正明団長(82)は「これまで市は原告らと一緒に国に援護対象区域の拡大を求めてきた。被爆地ヒロシマの原点に立ち返り、国と速やかに協議して被害者の救済を国に働き掛けてほしい」と要望。杉浦部長は「裁判になる前もなってからも降雨域の拡大を国に求めてきた。その気持ちは今も変わらない。みなさんの思いを受け止め、国と協議する」と話した。

 一行は続いて県庁も訪問し、担当者に同様の趣旨の申し入れ書を提出した。

 国は1976年、市中心部の爆心地から北西部にかけての長さ約19キロ、幅約11キロの「大雨地域」を援護対象区域に指定した。被爆者健康手帳の交付は国の施策だが、法定受託事務として市や県が認定、交付などの実務を担っている。原告84人はいずれも黒い雨を浴びるなどし、国が被爆者健康手帳の交付対象とする白内障やがんなど11疾病を発症したため、市や県に手帳交付を申請したが、援護対象区域外だったことを理由に申請を却下されていた。

 29日の地裁判決は、黒い雨は「大雨地域」よりも広範囲に降った事実が確実に認められるとし、国の援護対象区域の「線引き」の妥当性を否定。黒い雨を浴びたことと疾病の関連が想定されるとし、被爆者に当たるとの判断を示した。(松本輝)

 【関連記事】
 「黒い雨」全面勝訴、84人全員を被爆者認定 広島地裁、初の司法判断

 被爆75年、認定「やっと」 「黒い雨」訴訟の原告歓喜「控訴断念求める」

 「内部被曝判断、歴史的な瞬間」 「黒い雨」訴訟、広島大・大滝名誉教授ら識者の話

 「黒い雨」訴訟、広島市は控訴有無の明言避ける 「国の代理」複雑な立場


  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

トピックスの最新記事
一覧