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「黒い雨」訴訟、厚労省が控訴検討 「新たな知見ない」 広島市・県は救済要望

2020/8/8

平和記念式典終了後の記者会見で、「黒い雨」訴訟の控訴について明言しなかった安倍首相(6日、広島市中区) 

 原爆の放射性物質を含んだ「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い、健康被害を訴える広島県内の原告全84人に被爆者健康手帳を交付するよう広島市と県へ命じた7月29日の広島地裁判決で、厚生労働省が市と県に控訴を求める方向で検討していることが7日、分かった。ただ、市と県は政府の「政治決断」による控訴の見送りと被害者の救済を強く求めており、控訴期限の12日に向けて大詰めの駆け引きが続いている。

 複数の関係者によると、厚労省は広島地裁の判決後、原告全員に被爆者健康手帳を交付するのは困難と説明した。長崎原爆で国の指定地域外にいた「被爆体験者」を被爆者と認めなかった最高裁の2017年12月と19年11月の2度の判断や、健康被害を黒い雨の影響とする新たな科学的知見がない点を理由に挙げたという。

 このため厚労省は、原告全員について控訴する検討を進めており、市と県へ控訴を求める方向だ。被爆者健康手帳の交付は国からの法定受託事務として市と県が実務を担っており、今回の裁判では市と県が被告となっているためだ。

 一方で市と県は、援護対象区域の拡大を長年にわたって国に求めてきた経緯がある。松井一実市長は6日、国が控訴を求めてきた場合に市の判断で控訴を見送る可能性について「被害者の救済が最終目的。区域の拡大が見通せるかどうか見極めたい」と語った。

 この状況を踏まえて、厚労省が控訴を求める際、援護対象区域の見直しが必要かどうかを検証する方針を合わせて打ち出し、市と県に譲歩を促すとの観測が出ている。安倍晋三首相(山口4区)が控訴断念を政治決断する余地が残っているとの見方もある。市と県は政府の方針を見極めた上で、最終的に控訴するかどうかを判断する見込みだ。

 現行の援護対象区域は、被爆直後の広島管区気象台(現広島地方気象台)の調査を基に、国が1976年に指定した。市や県が2010年、黒い雨体験者たちのアンケートに基づいて拡大するよう国に求めたが、厚労省の有識者検討会は12年、区域拡大に否定的な報告書をまとめ、当時の民主党政権が拡大を見送った。

 広島地裁判決は、援護対象区域の妥当性を否定し、国に見直しを迫る内容。与野党双方の国会議員から「控訴を断念するべきだ」との声が上がり、自民党の岸田文雄政調会長(広島1区)も拡大の必要性に言及している。

 加藤勝信厚労相(岡山5区)は7日の記者会見で、広島地裁判決について「これまでの最高裁判決や、科学的知見に基づくわれわれの対応とは異なる、厳しい内容だ」と述べた。

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