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違法残業・未払い、技能実習生被害 広島県東部、複数の縫製会社

2020/8/8
縫製会社で働く技能実習生が残業時間を記した6月のカレンダー。残業時間は合計で100時間を超えていた(画像の一部を修整しています)

縫製会社で働く技能実習生が残業時間を記した6月のカレンダー。残業時間は合計で100時間を超えていた(画像の一部を修整しています)

 広島県東部の複数の縫製会社で、外国人技能実習生への長時間労働や残業代未払いが横行していることが関係者への取材で分かった。法定を大きく超える月100時間以上の残業が常態化し、残業代の大半は最低賃金の半分ほどの時給で計算されている。縫製業界では実習生を巡る賃金トラブルが絶えず、専門家は国内市場縮小のしわ寄せが末端の実習生を直撃していると指摘する。

 県東部は備後絣(がすり)を源流とする繊維産業が盛んで、縫製工場は激減したものの一定に集積する。中国新聞の取材に長時間労働と残業代未払いを訴えたのは、この地域の縫製会社3社で今も働くベトナム人の女性実習生。うち1社で2017年から働く3人によると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で仕事が減るまでは、休みは月平均2日で、残業は多い月で150時間に上った。

 残業代は「表と裏」に分けて支給される。残業が127時間30分だった6月を例に取ると、給料では残業は20時間とし、最低賃金の871円で計算。給料の手取り総額は約12万5千円だった。残る100時間余りの残業分は1時間450円で計算され、約4万5千円を別に封筒で手渡された。

 労働基準法は、1カ月の時間外労働の上限を原則45時間とし、その際は通常の1・25倍以上の割増賃金を支払うと規定。実習生も例外ではない。3社はいずれも月100時間近く残業させた一方で、給料上の残業は月10〜30時間程度だったと偽装。残りの残業分は低額で計算して支払った。

 ▽よくある手口

 3社の実習生は7月、実習生を支援する労働組合を通じて会社側に未払い賃金を求めた。うち1社の社長は中国新聞の取材に現在は法定通り払っているとした上で、過去の未払いを認め、実習生2人に支払いを約束した。一方で、実習生との間で当初、残業代を400〜450円で支払う「口約束」が成立していたとも説明した。

 この社長は「ちゃんと払うと違法な長時間労働がばれる。実習生は金のために少しでも残業がしたい。だから裏で払える分だけを渡していた」。縫製業界ではよくある手口とも明かし、背景には厳しい国内市場があるという。

 低価格の商品を次々と供給するファストファッションの流行に伴い、衣服を安く大量生産する工場は海外へ移行し、国内の衣料品市場の規模は縮小。メーカー側が工賃を上げず、縫製の現場は苦境が続く。関係者の一人は「日本人は来ず、現場は実習生頼み。メーカーが単価を上げない限り悪循環は続く」と嘆く。

 ▽「氷山の一角」

 厚生労働省によると、18年に実習生を受け入れる繊維・衣服業種で監督指導した計782事業所のうち、割増賃金の支払いに関する違反は約2割の155事業所に上り、違反項目で最も多かった。同様に実習生が多い建設や農業などを含めた5職種で、割増賃金や長時間労働に関する違反の割合も他業種より高い水準にある。

 技能実習制度に詳しい法政大の上林千恵子教授(産業社会学)は「業界の構造的な問題で、今回のケースは氷山の一角」と指摘。「新型コロナウイルスの感染拡大の影響でアパレル市場の厳しさは一段と増している。実習生にしわ寄せが向き、同様のトラブルがさらに増えるのではないか」と警鐘を鳴らす。(高本友子)

 <クリック>外国人技能実習制度 途上国への技術移転や人材育成を目的に1993年にスタート。繊維・衣服や機械・金属関係、介護など81職種で外国人を受け入れる。日本の監理団体が相手国の送り出し機関と契約して受け入れ、実習生は監理団体の会員企業で働く。期間は最長5年。技能実習とは別に、新たな在留資格「特定技能」が昨年4月に新設された。対象は介護など14業種で、繊維・衣服業は含まれていない。

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