寮生活のリスク浮き彫り 松江の高校クラスター、相部屋や食堂・浴室共用
松江市の立正大淞南高で9日判明した新型コロナウイルスの大規模なクラスター(感染者集団)は、強豪サッカー部の寮を舞台に、異例の90人超えの感染へと膨らんだ。島根県でのこれまでの感染確認数の3倍を上回る。大勢が共同生活をする寮のリスクを浮き彫りにし、専門家はどこでも起こり得るとして「きちんと検証し、広く対策を伝える必要がある」と警鐘を鳴らす。
同校サッカー部は、全国高校選手権に18回、全国高校総体(インターハイ)に13回の出場を誇る。県外出身者が多く、部員138人のうち122人が、部専用の「陽光寮」で生活する。
異変が起きたのは5日。8日にいち早く感染が確認された男子生徒に38度台の発熱が見られた。6日には計19人が一気に発症。9日になって、帰省中の2人を除く計119人のPCR検査を実施し、3分の2の80人が陽性と判明した。うち30人が頭や喉の痛み、倦怠(けんたい)感、味覚障害などの症状を訴えた。
学校によると、寮は2人部屋で、食堂や浴室、トイレなどは共用。部員の一部は、7月23〜25日に大阪、8月3、4日に鳥取、同4〜6日に香川へ遠征し、複数の学校との練習試合をしていたという。
松江保健所の竹内俊介所長は、遠征先で複数の部員が感染した可能性を指摘。「(感染力が強い)スプレッダーがいるのは確かだが、一人でこれだけ広げる例はあまり聞かない」と話した。
島根県の感染確認は7日時点で29人だったが、今回のクラスター関連で8、9日に新たに計93人が判明した。感染拡大は寮生にとどまらない。この93人のうち、自宅から通う6人の部員や部に関わる教員2人、仕事で寮に出入りしていた70代男性と同居人3人への波及も見られる。
10日に記者会見した丸山達也知事は「学校側が19人も発症した6日の時点で感染の広がりを疑うことができなかったのか。検証し、改善してほしい」と、再発防止策を求めた。
島根大医学部の礒部威教授(呼吸器・臨床腫瘍学)は「食事中に感染が広がった可能性が高いのではないか。寮で共同生活する生徒は、家族のようなもの。今回の事例から、寮内での対策をすぐに発信すべきだ」と強調した。(松本大典)
▽練習試合の相手44人は陰性確認 鳥取県、調査を継続
鳥取県は10日、松江市の立正大淞南高サッカー部と練習試合を行った県内の高校の生徒たち関係者のうち44人にPCR検査を実施し、全員の陰性を確認した。
県によると、県西部の複数の高校が7月末から8月初めにかけて練習試合をしたという。11日以降も接触者の調査と検査を続ける。
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