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「黒い雨」訴訟、国と広島市・県が控訴 援護区域「拡大も視野」【動画】

2020/8/12 23:27

記者会見で控訴を決断した経緯などを説明する松井市長

 ▽厚労相は再検討表明

 原爆の放射性物質を含んだ「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い、健康被害を訴える広島県内の原告全84人に被爆者健康手帳を交付するよう広島市と広島県に命じた7月29日の広島地裁判決で、被告の市と県、訴訟に参加する厚生労働省が12日、広島高裁に控訴した。加藤勝信厚労相(岡山5区)が援護対象区域について「拡大も視野に入れた再検討をする」と表明し、政府に控訴断念を求めてきた市と県が控訴に転じた。

 被爆75年の節目に出た原告全面勝訴の裁判は、審理の舞台を広島高裁へ移す。一方で、国が1976年に指定した黒い雨の援護対象区域「大雨地域」は、広がる可能性が出てきた。市役所で記者会見した松井一実市長は「本年度中をめどに方向性を出すよう求めていく。そうでなければ、拡大が結実するかどうか不安定になる」と主張した。

 原告団は広島市中区で記者会見を開き「厚労省は原告を含めた被害者を救済せず、控訴という不当な政治決断をした」と批判した。松井市長は「勝訴された原告を思うとつらいが、訴訟とは別に救済の道を開かなければならない。科学的に被爆との因果関係を明確にしなければ救済しない仕組みを越えた政治決断が必要だ」と理解を求めた。

 加藤厚労相は控訴を決めた理由について「関係省庁で協議した結果、これまでの最高裁判決と異なり、十分な科学的知見に基づいた判決とは言えないと結論付けた」と説明した。長崎原爆で国の指定地域外にいた「被爆体験者」を被爆者と認めなかった最高裁の2017年と19年の2度の判断などが背景にある。

 同時に、専門家を含む研究班をつくって「区域拡大も視野に入れた再検討をする」との考えを示した。松井市長は11日に加藤厚労相とインターネットを使って会談した際にこの方針を聞き、控訴を受け入れたと説明。研究班に市職員を参加させ、本年度中にも援護対象区域の拡大について方向性を出すよう政府に求めていくと表明した。

 現行の援護対象区域は、被爆直後の広島管区気象台(現広島地方気象台)の調査を基にする。今回の広島地裁判決はこの線引きの妥当性を否定し、原告の証言の信用性などを個別に検討するべきだとして、原告全員に被爆者健康手帳を交付するよう命じた。手帳の交付は国からの法定受託事務で、交付の実務を担う市と県が裁判で被告となった。(久保田剛)

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