【あの日から 広島土砂災害6年】<3>祖母への誓い 大学で学ぶ防災
▽命失う悲劇を減らしたい
澤本陽奈(ひな)さん(19)は今春、愛媛大(松山市)に進学し、防災について学び始めた。広島市安佐南区緑井の実家は6年前の広島土砂災害で土石流にのまれ、同居していた祖母範子さん=当時(77)=を亡くした。自分と同じような悲しい思いをする人が一人でもいなくなるように―。大好きだったおばあちゃんにそう誓い、新たな一歩を踏み出した。
▽避難先に訃報
「ドンッ」。2014年8月20日未明、激しい衝撃に襲われ、自宅は全壊した。7人暮らし。1階で寝ていた範子さんは土砂にさらわれた。当時、中学1年生だった陽奈さんは2階にいて無事だった。夜が明け、避難先の集会所で親戚から祖母の訃報を聞いた。
優しい祖母だった。いつも幼稚園の送り迎えをしてくれた。編み物を教えてくれた。再建した家に戻ると余計に寂しさが募った。胸が張り裂けそうで、いつしか祖母の思い出や被災した体験を口にしなくなった。
災害から1年半後、転機が訪れる。地元のボランティア団体に誘われ、東日本大震災の被災地を訪ねた。宮城県石巻市の大川小で娘を亡くした男性に出会い、自らの体験を打ち明けた。一緒に涙を流した。
「大切な人を失った人同士だからこそ語り合い、心の傷を和らげ合うことができる」。それから17年の九州北部の豪雨、18年の西日本豪雨と、災害ボランティアとして被災地を巡った。
祖母の命を奪ったあの日と同じように、泥とがれきが広がる被災地に立つと、いつも思う。「救えた命があったのではないか」と。災害に強いまちづくりを学びたいとの意欲を強めていった。地域防災などを研究テーマにする愛媛大環境デザイン学科を志望し、合格した。
入試は範子さんの形見をかばんに入れて臨んだ。紺や白、オレンジのストライプ柄が鮮やかな、がまぐち財布。中学に入った時、範子さんの部屋で見つけた。「かわいいから、もらってもいい?」と聞くと、「仕方ないわねえ」と笑って手渡してくれた。
▽思い出が力に
大学卒業までに防災士の資格取得を目指す。ただ、新型コロナウイルス感染拡大のため大学には通えず、実家でオンライン授業を受ける日々が続く。先の見えないコロナ禍に不安も募る。
「おばあちゃんに会いたい気持ちは全く変わらない。これからもそうだと思う」。悲しみは消えない。でも、かつて胸に封じ込めていた祖母との思い出が、今は前に進む力になっていると感じる。「困った時はいつも『陽奈が決めたことなら応援するよ』って声を掛けてくれた。今もそう言っていると思います」(木原由維)
【あの日から 広島土砂災害6年】
<1>息子の自転車 2年後に届いた贈り物
<2>新たな絆 隣人たちと開く教室
<3>祖母への誓い 大学で学ぶ防災
<4>チームメート エースの追悼試合
<5>遺志をつなぐ 消防士の部下、警察官の長男
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