• トップ >
  • トピックス >
  • 大田「夕市」の朝市統合提案で溝 JF側「全国流通に道」/漁業者「鮮度が下がる」

トピックス

大田「夕市」の朝市統合提案で溝 JF側「全国流通に道」/漁業者「鮮度が下がる」

2020/8/18 9:29

夕市の存続を求めてJF本所前で抗議する漁業者(4日)

 大田市で水揚げした魚をその日の夕方に競る「夕市」を巡り、朝市に統合する方針のJFしまねと、反対する漁業者との溝が深まっている。効率化で利益が増えるというJFに対し、「魚の鮮度が下がる」と危機感を強める地元。9月1日の統合まで2週間となった。漁が早く終わる夕市からの転換は「働き方」も変えるだけに、丁寧な議論が求められる。

 「漁業者の声を聴け」「夕市を守ろう」。4日、松江市のJF前の歩道で、大田市の漁業者約100人が声を上げた。抗議活動は、7月上旬に次いで2回目。代表者がJFの岸宏会長と面会して夕市廃止の撤回を求めたが、聞き入れられなかったという。

 両者の主張は平行線をたどってきた。岸会長は取材に対し、全国で数カ所しかない夕市では「市場が狭まる」と主張。主流な朝市に魚を集めて流通に乗せ、関東など規模の大きな市場で売る量を増やせば魚価を維持できるという。また、朝市なら豊漁の日に長く漁ができ、漁業者の所得向上が期待できるとする。

 これに対し漁業関係者は、朝市では水揚げから競りまでの時間が長くなり、鮮度が下がると反論する。大田市の水産加工業岡富商店の岡田明久社長は「魚種にもよるが夕市の魚は朝市に比べ15〜20%高い」と指摘。40代の仲買人男性は、夕市で競った魚が翌朝の関西や広島の市場に間に合う現状を踏まえ「夕市がないと市場に出すのが丸1日遅れる。高く売れなければ安く買うしかない」と明かす。

 夕市は約70年続く。漁業者の暮らしに組み込まれており、朝市への一本化で働き方も大きく変える。抗議の中で「時代に逆行する」との声も上がってきた。

 夕市の場合、漁師は午後5時ごろまでに漁を終え、午後7時ごろには帰宅するが、朝市では2時間程度後ろ倒しになるという。若手漁業者でつくる大田市漁業青年部の渋谷晋也会長(42)は「世の中の働き方改革の流れに取り残され、漁師になる人が減る」と訴える。

 ▽関与に距離置く行政

 事態の打開に向け、漁業関係者は6、7月、夕市存続への協力を市と島根県に訴えた。だが、楫野弘和市長は6月末の会見で、関与は難しいとの見方を表明。県は卸売市場法に基づき、JFに対し関係者の懸念を拭う方法などについて報告を求めた。ただ、担当者は「夕市をやめるのは法令違反ではない。県として何ができるか考えている」と難しい立場をにじませる。

 解決の糸口が見えないまま、9月1日は迫る。いまだ混乱する背景には、漁業者がJFの運営に対して抱く不信感もある。JFは2013年に市内4市場を統合した後、朝市への一本化の検討を開始。18年2月から各漁法の代表者たちで議論したとし、合意形成を重ねたと強調する。だが地元に「漁業者の声を聴いていない」との指摘は根強い。

 若手漁師たちは、8月4日にJFへ提出した意見書にこう記した。「(大田の漁業者の)JFしまねの事業運営に対する不満は限界に達している」。漁業者あってのJFは、基本理念の「信頼と挑戦」に立ち返った対応を探る必要がある。(下高充生、鈴木大介、松本大典)


この記事の写真

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

トピックスの最新記事
一覧