【あの日から 広島土砂災害6年】<5>遺志をつなぐ 消防士の部下、警察官の長男
▽教えを胸に命救う決意
7月末、広島市安佐南区の市安佐南消防署の敷地内で救助隊員の声が響いていた。はしご車を使って建物3階のけが人を救助する訓練。6年前のあの日を思わせるような強い雨が降っていた。「常に冷静であれ、と繰り返していた上司の教えを受け継いでいく」。消防司令補の砂原基彦さん(35)は表情を引き締めた。
「上司」とは、2014年8月の広島土砂災害で殉職した市安佐北消防署の政岡則義さん=当時(53)。安佐北区可部東の裏山が崩れた民家で3歳の男児を救助しようとして土石流に巻き込まれ、男児を抱えたまま命を落とした。当時、勤続36年目。生きていれば本年度末、定年を迎えるはずだった。
砂原さんは消防に入って4年目の11年度、市安佐北消防署安佐出張所の警防隊で政岡さんの部下だった。救助隊として活躍し、阪神大震災の被災地で活動した経験を持つ政岡さんは憧れの存在。左胸の名前が見えるように服をたたむこと、机の整理、靴の並べ方…。消防士の基本をたたき込まれた。冷静な判断で現場をまとめる姿から、消防士としての心構えを学んだ。
「政岡さんが歩んだ道で実力を磨きたい」と救助隊入りを志願。12年から救助隊員として活動し、15年には救助技術を競う全国大会の中国ブロック予選を突破した。
▽安全を誓う日
どんな現場でも熱くなるな―。その教えが生きた場面がある。18年7月の西日本豪雨。土石流が発生した広島県坂町小屋浦地区などで活動し、自宅に取り残されるなどした多くの被災者を救出した。同僚にけが人を出すことなく任務を終えた。
市消防局は政岡さんの殉職を機に、広島土砂災害が発生した8月20日を「安全を誓う日」と定めた。ただ6年がたち、政岡さんの現役時代を知らない後輩は増えた。砂原さんは「政岡さんの犠牲を無駄にしてはならない。教わったことを次の世代に語り継ぎたい」と誓う。
▽父はヒーロー
「多くの現場で救助に尽くした父は、私のヒーローだった」。政岡さんの長男敬志(たかし)さん(36)は目を細めて振り返る。12年、県警の警察官になった。父とは違う道ながら、人を救うという同じ目標を見詰める。「父の最期は、諦めないという信念があってこその行動。遺志を継いでいく」。七回忌を前に決意を新たにする。
現在、三原署交通課に所属する。西日本豪雨では、大規模な浸水被害が出た三原市の被災地で住民の安否確認に回った。「父のすごさを実感した。正義感や使命感を強く持ち、いつか父を超えたい」
消防士の部下と警察官の息子。一人でも多くの人を助けたい―。2人はそれぞれの立場で、政岡さんの遺志を胸に、その背中を追い掛けていく。(重田広志)=おわり
【あの日から 広島土砂災害6年】
<1>息子の自転車 2年後に届いた贈り物
<2>新たな絆 隣人たちと開く教室
<3>祖母への誓い 大学で学ぶ防災
<4>チームメート エースの追悼試合
<5>遺志をつなぐ 消防士の部下、警察官の長男
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