【あの日から 広島土砂災害6年】<4>チームメート エースの追悼試合
▽白球の絆 ずっと続ける
広島土砂災害が発生して6年となる20日、当時避難所になった梅林小(広島市安佐南区八木)のグラウンドでソフトボールの試合が行われる。災害で犠牲になった佐々木秀敏さん=当時(53)=の追悼試合。梅林体協ソフトボール部員だった。6回目となる今年も佐々木さんを知るチームメートたちが集い、在りし日をしのぶ。
もの静かで、みんなから秀(ひで)さんと呼ばれて親しまれた佐々木さん。30代半ばで入部し、背番号はずっとエースナンバーの「18」。週2回の練習では誰よりも早くグラウンドに来ていた。佐々木さんが在籍していた時の監督の一人、田村政司さん(68)は「ストイックな姿にチームの士気が上がり、強くなった」と振り返る。毎年秋にある地元の大会で2004年から3連覇を達成。佐々木さんはその立役者だった。
▽試合前 黙とう
あの日、同小近くの自宅にいた佐々木さんと妻厚子さん=当時(53)=は土石流にのみ込まれた。災害から10日後、2人の葬儀が営まれた。部員たちは自らも被災したにもかかわらず、次々と駆け付けた。
「最高のチームメートで、生涯の友だった」。二十数年前、同じ時期に入部し、バッテリーを組んだ立上真一さん(59)は言う。災害の前日に電話し、次に会う約束をしたのが最後の会話になった。約10年前に退部してからも練習に顔を出していたが、被災後はグラウンドに近寄れなくなった。「エラーした選手を責めたことがない。そんな秀さんを思い出して、涙が止まらなくなるんです」
部員は皆社会人。普段の仕事抜きで人生や家族のことを語り合った。年代も幅広い。だからこそ互いを思いやり、絆を紡ぐことに時間をかけた。かけがえのない仲間だった。
「秀さんは何度もチームを救ってくれた。真剣勝負で恩返しをしよう」。災害の1年後、田村さんたちが歴代の部員に追悼試合を呼び掛けた。約80人が集まった。それから毎年8月20日前後に開く恒例行事になった。プレーボール前に、佐々木さんを含めた災害の犠牲者に黙とうをささげる。
▽絶対忘れない
被災各地での今年の追悼行事は、新型コロナウイルス感染拡大のため縮小・中止が相次ぐ。七回忌となるのを機に、犠牲者の合同法要を今回で最後にする寺もある。「今後、新たな部員も入部してくる。秀さんと災害を絶対に忘れないよう、ずっと続けていきたい」と部長の相本和紀さん(51)は誓う。
20日の試合では、背番号18のユニホームをベンチに掲げる。「秀さん、天国でも投げているだろうな。またどこかで一緒にやりたいな」。ピンチに堂々とマウンドに向かった背中を思い浮かべ、みんなで白球を追い掛ける。(木原由維)
【あの日から 広島土砂災害6年】
<1>息子の自転車 2年後に届いた贈り物
<2>新たな絆 隣人たちと開く教室
<3>祖母への誓い 大学で学ぶ防災
<4>チームメート エースの追悼試合
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