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幻のレコード音色再び フィルモン音帯、口和郷土資料館の安部館長が再生機復元
昭和初期に国内で開発、販売され、わずか数年の短命に終わった日本独自規格の幻のレコード「フィルモン音帯」の再生機を、庄原市口和町の口和郷土資料館の安部博良館長(78)が復元した。電器メーカーの元技師の知識を生かし、古い家電製品や放送機器の部品を活用。館が所蔵する音帯から、戦前の長唄やクラシックがよみがえる。
フィルモン音帯は1937年ごろ、東京の日本フィルモンが開発した帯状のレコード。幅3・5センチ、長さ13メートルの樹脂で、端と端をつないで輪にしている。円盤と同様、表面に溝が刻まれており、針に伝わる振動を音に変換する。専用機で再生する。
口和町出身の安部館長は元ソニーの技術者。復元した再生機は高さ57センチ、幅50センチ、奥行き36センチで、昭和40年代のステレオの木製ケースを本体にした。音帯を装着して回転させる駆動部には、同年代の放送局用VTRの部品を活用。映写機や家庭用ビデオデッキからも流用した。
同館は蓄音機、真空管式ラジオなど明治から昭和の音響・映像機器を展示し、年代物の機器の寄贈も受けている。復元には、真空管、ギア、基板など大小60点以上の部品が生きた。
東京文化財研究所特任研究員の飯島満さん(61)によると、国内に現存する音帯は120本、動く再生機は数台。飯島さんは「再生機を手作りして復元したのは国内初」とみている。
2014年秋、同市西城町の主婦が自宅の蔵で見つけた音帯10本を館に寄贈したのがきっかけ。安部館長は原理を学び、今年5月、本格的に再生機の復元に着手。劣化でゆがんだ音帯を安定して再生できるよう、駆動部の回転速度などの微調整に苦心した。試行錯誤を重ねて完成した。
「日本独自のガラパゴス的な商品だが、当時の知恵と技術の高さを実感した。間近で見て聞いてほしい」と安部館長。現在は、新型コロナウイルス対策で市内の公共施設は休館中。再開後は希望者に披露する。資料館Tel0824(87)2230=月、木、土曜。(小島正和)
<クリック>フィルモン音帯 1937年設立の日本フィルモン(東京都狛江市)が開発した日本独自の音声記録メディア。当時主流だったSPレコードの10倍となる最長36分間録音ができ、音質も安定していたという。戦前の物資不足などにより同社は40年に解散し、工場は軍需工場に転用された。現在、稼働する再生機は国内に数台しか確認されていない。
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