広島政界、金権体質あらわ 「現金授受」40人明らかに
参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件の初公判で25日、前法相の河井克行被告(57)=衆院広島3区=と妻の案里被告(46)=参院広島=から現金を受け取った疑いのある広島県内の首長や地方議員40人が検察側の冒頭陳述で明らかになった。県政界にはびこる金権体質が公開の法廷で露呈した。
冒頭陳述によると、40人の内訳(肩書は事件当時)は、首長2人▽県議14人▽広島市議13人▽安芸高田市議3人▽廿日市市議2人▽呉市議、尾道市議、江田島市議、府中町議、安芸太田町議、北広島町議各1人。
最高額の200万円を受け取ったのは、県議会議長や自民党県連幹事長を歴任した奥原信也県議(77)=呉市。検察側はこの日の冒頭陳述で「克行被告が選挙運動の進捗(しんちょく)状況を話した上で現金を供与した」と指摘した。一方、奥原県議は中国新聞の取材に「明確な言葉はないが、参院選の支援を頼む意図を感じた」と説明する。
県議会では2005年に故藤田雄山前知事の後援会不正事件があり、広島地検が初公判で、知事選で県議らに配られた「対策費」に言及した。その後、対策費の配布先を記したとみられるメモの存在が判明したが、県議らは事実関係を否定。奥原県議もそのうちの一人だった。
河井夫妻から50万円を受け取ったとされる自民党の岡崎哲夫県議(65)=府中市・神石郡=も前知事後援会の事件当時から県議会にいた。これまでの取材では現金授受を認めてこなかったが、初公判を機に「案里被告から当選祝い、克行被告からは寄付で受け取った」と一転受け取りを認めた。
自民党に所属する元広島市議会議長の藤田博之市議(82)も現金授受を認めた。「いらないと断っても克行被告が『私個人からなので領収書はいらない』と置いて帰った」と弁明した。
今回の事件を受け、同市議会は7月に政治倫理の順守決議案を可決した。有権者への説明責任を果たすよう求める内容だが、いまだ説明を拒む議員も多い。50万円を受け取ったとされる自民党の今田良治市議(73)は「経緯は法廷で証言する」と言うにとどまる。
公選法では現金を受け取った側も罪に問われるが、検察側は被買収者全員を立件しておらず、有権者は厳しい視線を向ける。広島市の市民団体などは初公判で判明した被買収者の実名を基に刑事告発する方針だ。
両被告はこの日、現金配布の買収目的を否定し、無罪を主張した。克行被告から30万円を受け取った自民党の広島市議は「いろんな人に責められ、最近は眠れない日々だ。克行被告は許せない」と語気を強めた。
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