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「票取りまとめの報酬」【検察側冒頭陳述】<1>
【検察側冒頭陳述】
第1 被告人の身上、経歴等
1 被告人河井克行について
(1)被告人河井克行(以下「被告人克行」という。)は、平成3年、広島県議会議員選挙で初当選した。
その後、被告人克行は、平成8年、第41回衆議院議員総選挙で国政選挙に初当選すると、第42回衆議院議員総選挙では落選したものの、第43回から第48回の衆議院議員総選挙で連続して当選し、本件犯行時は、広島県第三選挙区で当選して衆議院議員の7期目を務めていた。
また、この間、被告人克行は、外務大臣政務官、法務副大臣、衆議院外務委員長、内閣総理大臣補佐官等を歴任し、本件犯行後となる令和元年9月には法務大臣に就任したが、同年10月に法務大臣を辞任した。
(2)被告人克行は、被告人河井案里(以下「被告人案里」という。)と婚姻関係にある。
2 被告人案里について
(1)被告人案里は、平成15年、広島県議会議員選挙の広島市安佐南区選挙区で初当選した。
その後、被告人案里は、平成19年の広島県議会議員選挙でも当選し、任期途中の平成21年、広島県議会議員を辞職して、広島県知事選挙に立候補したが、落選した。
また、被告人案里は、平成23年及び平成27年に、それぞれ広島県議会議員選挙で当選したが、平成31年4月7日施行の広島県議会議員選挙(以下「県議会議員選挙」という。)には立候補せず、同じ年の令和元年7月21日施行の第25回参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」という。)の広島県選挙区に立候補して、国政選挙に初当選した。
(2)被告人案里は、被告人克行と婚姻関係にある。
第2 本件選挙における被告人案里の選挙情勢、選挙状況等
1 自由民主党(以下「自民党」という。)本部は、かねてから、参議院議員通常選挙広島県選挙区について、自民党広島県支部連合会(以下「広島県連」という。)の推薦する候補者1名を公認候補として擁立していた。
本件選挙においても、自民党本部は、広島県連の推薦を受けて、平成30年7月頃、現職の溝手顕正議員を公認候補としたが、その後、同選挙区において2人目の候補者を擁立することとし、平成31年3月13日、広島県連の反対を押し切る形で、溝手顕正議員に加え、被告人案里を同選挙区の公認候補として擁立した。
河井克行後援会「三矢会」連合会(以下「三矢会」という。)は、被告人克行の後援会として政治団体の届出がなされ、被告人克行の選挙時には被告人克行を当選させるための選挙運動を行っていたところ、被告人案里は、同月10日から同月17日にかけて、5回にわたり、三矢会の集会において、本件選挙への出馬を表明し、同月20日には、記者会見を開いて、本件選挙への出馬を公表した。
また、同月27日には、被告人案里を代表者とする自由民主党広島県参議院選挙区第七支部(以下「第七支部」という。)が設立され、同年4月22日には、広島市中区に本件選挙のための事務所(以下「選挙事務所」という。)が設置された。
2 被告人克行は、選挙事務所設置後、選挙事務所に被告人案里の当選に向けた選挙対策本部(以下「選対本部」という。)を置き、被告人克行を代表者とする自由民主党広島県第三選挙区支部(以下「第三支部」という。)及び第七支部の職員らをスタッフとして、自らの指揮の下、被告人案里の当選に向けて、本件選挙に向けた活動を本格化させた。
もっとも、被告人克行は、広島県連が自民党本部の方針に強く反発し、溝手顕正議員のみを支援して被告人案里の支援を行わない方針を打ち出したことなどから、被告人案里の選挙情勢が非常に厳しいものとなると予想した。
3 本件選挙は、令和元年7月4日に公示され、広島県選挙区では定数2名のところに被告人案里及び溝手顕正議員ほか5名が立候補し、同月21日の投開票の結果、被告人案里ほか1名が当選し、溝手顕正議員は落選した。
第3 被告人克行が本件選挙の選挙運動全般を取り仕切る立場にあったこと(被告人案里の立候補届出後は総括主宰者の立場にあったこと)
1 被告人克行は、本件選挙の選挙運動における各業務の担当者を選定してその役割を決定することにより選対本部の人員体制を策定し、各担当者にその役割等を指示した上、各担当者の担当業務の日々の進捗状況等を把握して、各担当者に対して詳細な指示を行い、選挙運動費用についてもその支払状況等を把握して多額の支払については自己の了承を事前に求めさせるなどしていた。
このように、被告人克行は、本件選挙の選挙運動全般を取り仕切る立場にあって、被告人案里の立候補届出後は、公職選挙法251条の2第1項第1号に規定される総括主宰者の立場にあった。
2 被告人克行が本件選挙の選挙運動全般を取り仕切っていた具体的状況は、以下のとおりである。
被告人克行は、平成31年4月下旬以降、順次、本件選挙の選挙運動における各業務の担当者を選定してその役割を決定し、担当者の仕事ぶりに不満を持った際にはその役割を変更していた。
具体的には、被告人克行は、同月下旬、番号1に事務長の肩書を与え、選対本部の取りまとめ役としたが、番号1の仕事ぶりに不満を持ったことから、令和元年6月中旬には、番号1に替えて番号2に事務局長の肩書を与え、選対本部の取りまとめ役をさせた。
また、被告人克行は、平成31年4月下旬、取りまとめ役である番号1の補佐役として自己の政策担当秘書であった番号3を据え(なお、番号3は、番号2が取りまとめ役となった後は番号2の補佐役として活動した。)、有権者や企業を訪問して被告人案里への投票依頼や投票の取りまとめ依頼を行う外回り担当として、その頃、自己の公設第一秘書の番号4、自己の公設第二秘書の番号5及び元公設第一秘書であった番号6を据えるとともに、令和元年6月上旬、番号7を据えた。
そして、被告人克行は、選挙運動期間中に被告人案里やいわゆるウグイス嬢らが選挙カーに乗って選挙区内を回り被告人案里への投票を呼びかけるなどの業務やその企画立案業務を行う遊説担当の責任者として、同年5月に番号1を据えたが、前記のとおり、番号1の仕事ぶりに不満を持ったことから、同年6月上旬、番号1に替えて番号8を据えた。
そして、番号1は、その頃以降は、公示日当日のポスター貼りの責任者としてその企画立案業務を担当したほか、選挙運動期間中は、被告人案里の出陣式や応援演説への動員業務や、遊説車両の先導車の手配業務を担った。
また、被告人克行は、選挙運動期間中に有権者に電話をかけて被告人案里への投票依頼を行う電話作戦担当及び同期間中に被告人案里への投票依頼のはがき(以下「選挙はがき」という。)を有権者に送付するはがき作戦担当の責任者として、同年7月上旬、番号9を据えた。
さらに、被告人克行は、本件選挙、第三支部及び第七支部の会計担当として、平成31年4月下旬、番号10を据えた。
3 そして、被告人克行は、選挙事務所内での打合せの際などに、各担当者に対し、それぞれがいかなる選挙運動を担うのかを伝えた。
また、被告人克行は、各担当者に指示して、担当業務の日々の進捗状況等を報告させて詳細を把握した上、各担当者に対し、詳細な指示を行っていた。
具体的には、外回りについては、被告人克行は、同月下旬以降から選挙運動期間終了まで、各担当者に対し担当区域を指定して外回りを行わせた上、各担当者から、相手方の反応等日々の外回りの結果について報告を受けるとともに、各担当者に対し、相手方への対応の仕方について詳細な指示をした。
遊説については、令和元年6月中旬以降、被告人克行は、番号8に指示して、選挙運動期間中の行程表を提出させた上、番号8に対し、遊説日程や遊説場所についての修正を指示し、選挙運動期間中、毎日、番号8に指示して、当日朝までにその日の行程表を提出させ、報告させていた。
電話作戦については、被告人克行は、番号9に対し、選挙スタッフが電話で有権者に話す内容についての修正や期日前投票の呼びかけを指示したり、重点的に電話をかける地域を指定したりしたほか、選挙運動期間中、毎日、番号9に指示して、その日の電話件数等を報告させ、さらには、番号9に指示して、選挙運動が禁止される投開票日の同年7月21日にも電話作戦を実施させた。
はがき作戦については、被告人克行は、選挙運動期間中、毎日、番号9に指示して、その日の発送件数を報告させたほか、自ら入手した団体等の名簿を渡して、その名簿に掲載された人物へ発送させるなどした。
4 被告人克行は、本件選挙の選挙区が広島県内全域にわたっていたことから、被告人克行や被告人案里の地盤地域外での選挙運動も繰り広げる必要があると判断し、同年6月上旬から中旬にかけて、呉市内及び福山市内にも、それぞれ事務所を設置し、それぞれの事務所のスタッフに選挙運動を行わせた。
5 選挙運動費用についても、被告人克行は、番号10に指示して、その支払状況等について報告させており、多額の支払については、支払内容を報告させた上、自らの了承を得た後に支払をさせていた。
また、被告人克行は、被告人案里の本件選挙の選挙運動費用収支報告書提出に当たり、同年8月上旬、番号10に指示して、提出前に自らにその内容を説明させ自らも同報告書に目を通した上で、番号10にこれを提出させていた。
第4 犯行状況等
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