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【やまぐち夏模様 コロナに負けじと】帰省なき里、つながり訪ね 中山間地域 勝手にお助け隊

2020/8/27 18:08
鎌を片手に桂さん(左)と生い茂る草を刈る(撮影・山下悟史)

鎌を片手に桂さん(左)と生い茂る草を刈る(撮影・山下悟史)

 ▽草刈り・掃除 60代も若手

 草刈り機で生い茂った雑草を刈り、地面に生えたこけを草削りでこそぐ。「ことしもひどく暑いね」。8月上旬、岩国市本郷町本郷にある戦没者を悼む忠魂碑で近くの60〜80代の約10人が汗を流していた。

 過疎高齢化が著しい中山間地域。加えてこの夏は新型コロナウイルスの影響で街へ出て行った子どもたちが帰省するのも難しく、各地の集落で草刈りや墓掃除に汗を流すのは例年に増してお年寄りばかりだ。

 ▽役に立ってこい

 コロナ禍の夏―。「取材するだけでなく、たまにはささやかでも地域のお役に立ってこい」と先輩記者に言われ、お手伝いの現場を山里に訪ね歩いた。

 その一つ本郷の忠魂碑の清掃では早朝からお年寄りが三々五々集まった。「お手伝いします」とやってきたものの、ほかの人がテキパキと作業する傍らでオロオロするばかり。見かねた「若手」の原田一志さん(67)が「これを使いなさい」と竹ぼうきを貸してくれた。

 参加者がみな顔見知りの中、「あなたはどなた」との視線が集まる。趣旨を告げると「ご苦労さま」とねぎらいの言葉をかけられた。「昔はここで盆踊りしたね」。にぎやかだったかつての集落の話を聞きながら朝の作業は進む。

 今年は新型コロナの影響で地区の夜市は中止。池田良幸さん(84)は「なんだか手持ち無沙汰で」と肩を落とす。関東で働く子や孫には「無理して帰ってくるな」と伝えた。忠魂碑の清掃も年々参加者が減るが、「元気なうちは続けるよ」と笑顔で語った。

 汗だくで清掃を終えて岩国市中心部の会社に戻ると左目に何か違和感。夜に自宅でしたたか飲んでいたがどうも変だ。鏡を見ると、目がしっかり開かないぐらい左目のまぶたが腫れ上がっている。どうやら作業中にハチに刺されたようだ。この企画を考えた先輩にメールすると「それぐらいあるよ」と素っ気ない返事。翌日からしばらく腫れた顔で取材に行く羽目になった。

 また、周東町祖生では地元農家と同市今津町の八百新酒造が酒米を作る田んぼの草抜きに加わった。さんさんと日差しが降り注ぐ中、蔵人たちとぬかるむ田んぼに足を取られながら生い茂る雑草を抜いた。

 ▽80代以上5世帯

 お盆明けには周東町の石ケ明神地区を訪ねた。80代以上の5世帯7人が暮らす地区は2年前の西日本豪雨で道路が土砂崩れで複数箇所ふさがり、市の生活バスが長い間通れなかった。

 集落を一軒一軒訪ね「何かお手伝いすることはありますか」と聞いて回った。やがて古民家の裏庭で腰を曲げ草を刈る桂喜公枝さん(85)に出会った。「すっかりやぶになってしもうて」。15年前から1人暮らしの桂さんが汗を拭う。足が悪く草刈り機を使えないという。翌日に草刈りを手伝わせてもらうことになった。

 その日は午前8時から鎌を片手に一緒に作業を始めた。戦時中は麓の修成小の校庭で芋を作っていたことなどを教えてもらいながら草を刈る。日が高くなった10時ごろに気温は30度を超えた。「昔はこんなに暑くなることはめったになかった」と桂さん。暑さに耐えかねていったん休憩した。

 桂さんは山口県内や広島、福岡に孫が7人いるが、帰省が難しいこの夏は多くを1人で過ごす。「みんな仕事も忙しいし」。肩をもんであげると毎日畑仕事をしているからか、かなり凝っている。「昔はよく孫にもんでもらったねえ」という。

 地区と町中心部とを結ぶバスは週に1本。不便はないか尋ねると「息子がよく来てくれるし、冷蔵庫もある。それに住み慣れたところが一番。自分で動ける間は家を守りたい」。

 あまりお役に立てないまま帰ろうとすると「たいしたものはないけど」とそうめんをゆがいてくれた。小学生の夏休みに帰省した岡山の県北の祖母宅で食べたのを思い出す。その祖母もことし4月に亡くなった。桂さんのそうめんはあの時と同じく冷えておいしかった。(坂本顕) 


この記事の写真

  • ほがらかに笑いながら集落の思い出をしゃべる桂さん(撮影・山下悟史)
  • 本郷町の忠魂碑で草刈りに精を出す住民たち。集落では60代半ばでもまだまだ若手
  • 忠魂碑の清掃中にハチにさされ腫れ上がった左目のまぶた。しばらくはこの顔で取材に行く羽目に

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