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アマダイ高級種の稚魚を大量生産 山口県水産センターなど2年連続成功
アマダイ類の中で最も希少性が高く美味で、市場では1キロ1万〜2万円の高値で取引されることもあるシロアマダイ。そんな「幻の高級魚」の稚魚の大量生産に長門市の山口県水産研究センターと同県栽培漁業公社が2年連続で成功し、技術を確立した。研究がさらに進めば、家庭の食卓に上る日が来るかもしれない。
産卵期の4〜5月に瀬戸内海で取れた雄7匹と雌3匹のシロアマダイを使って採卵、人工授精をして約40万個の受精卵を確保。うち約26万個を育て2日間で約14万個がふ化した。さらに50日間をかけ、体長4センチほどの稚魚を4万匹育てた。
同センターは2017年度に水産庁の委託を受け、生態調査と稚魚の生産研究を開始。昨年度から同公社と共同で実験に取り組み、水槽に当てる光の強さや水流の調節、餌やりのタイミングなどを工夫して全国初の稚魚の大量生産に成功した。今年も同じ手法で成果を出し、担当する同センター外海研究部の阿武遼吾研究員(29)は「1年だけなら偶然育つ可能性もある。2年連続の成功は技術が確立できた証し」と強調する。
シロアマダイは国内では紀伊水道から豊後水道の太平洋沿岸、瀬戸内海、若狭湾から九州西岸の日本海・東シナ海沿岸に分布。水深50〜100メートルの砂泥域に生息し、はえ縄や底引き網などで取れる。希少性が高く県内では年間100匹程度しか水揚げがない。漁業者から稚魚の生産を望む声が上がっていた。
ただ、シロアマダイの雌は生きたまま捕まえることが難しく、全国的に研究が進んでいない。同センターによると、天然物は取る際に受けるダメージが大きく、飼育しても3カ月程度で死んでしまうという。このため受精卵の安定確保が課題で、今後は稚魚の一部を親魚に育てる研究も進める。
今年も稚魚は体長7センチほどまで育てて8月上旬に瀬戸内海に放流。標識を付けて効果を検証する。約3年で30センチを超える漁獲サイズになるという。阿武研究員は「シロアマダイが家庭の食卓に並ぶ日が少し近づいた。研究を進めて資源量の増加につなげたい」と話している。(渡辺裕明)
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