広島県のコロナ「第2波」 感染数、第1波を上回る 重症者割合は減少
広島県で確認された新型コロナウイルスの感染者数は、7月以降に押し寄せている「第2波」の方が、4月中旬をピークとする第1波を大きく上回っている。しかし、重症者の割合は下がり、緊急事態宣言も出ていない。二つの波はどう違うのか。県のデータを基に探る。
▽年代と感染経路
県が3月7日に初めて感染者を公表してからの第1波の感染者(再陽性を含む)は計168人。これに対し、7月からの第2波は269人(8月18日まで)に上り、第1波の1・6倍に膨らんでいる。
年代別にみると、重症化しやすい60歳以上の割合は、第1波は23%だったが第2波では12%に下がった。その一方、行動範囲の広い40代未満の感染者は、第2波で54%を占め、第1波を11ポイント上回った。
県健康福祉局は「若い人はクラスター(感染者集団)の発生した飲食店などでの感染も目立つが、経路が分からない場合も多い」と説明する。実際、第2波では感染経路が分からない人の割合は5割に迫り、第1波の3倍近くになっている。広島大病院救急集中治療科の志馬伸朗(しめ・のぶあき)教授は「どこで感染したかが分からない人が多いのは、市中にウイルスがまん延している一つの現れ」と指摘する。
▽重症度
重症者は第1波の3人(感染者の1・8%)から、第2波では2人(0・7%)に減った。死者は5月までが3人で、その後はいない。東京や大阪と比べて、人口当たりの重症者数は少ない。全国的にも、第2波では死者と重症者が減っている。日本感染症学会の舘田(たてだ)一博理事長は「重症化しやすい高齢者の感染割合が下がり、医療機関での院内感染も減ったため」と分析する。
▽入院日数と病床使用率
平均入院日数は第1波では25・8日だったが、第2波では9・2日と2週間以上短くなった。感染者の退院の条件が変わったため。当初は、陰性2回の確認が必要で、軽症でも1カ月以上入院する人が目立った。国は6月12日、発症から10日間が過ぎ、症状が軽くなって72時間たてば退院できるように条件を見直した。医療の負担軽減につながり、入院患者を診ている県内の医師も「受け入れる医療機関は比較的落ち着いている」と話す。
その背景には、感染者向けの入院病床の拡充が段階的に進んでいることもある。第1波の病床使用率のピークは4月23日の49・1%で、175床のうち86床が埋まった。それが第2波では、8月2日に最多の121床を必要としたが、261床を確保していたため使用率は46・4%に収まった。
県の担当者は「第1波の時は手探りで、協力医療機関やホテルの調整にも追われた」と振り返る。「現時点では最大500床まで増やせる。安心してもらえる患者の受け入れ態勢の整備に尽くしたい」という。
▽検査
検査の数も第2波で増えた。1日の平均の検査数は、第2波は175人。第1波(陽性者が出ていた期間)と比べると2倍を超す。県は、身近なかかりつけ医が唾液で検査する仕組みも整え、今後はさらに検査が受けやすくなる見込みだ。
県内は第2波が収まりつつあるとみられる一方、第3波も必ず来るという見方が一般的だ。
広島大大学院の田中純子教授(疫学・疾病制御学)は「意識と行動を変えれば、爆発的な拡大を抑えられることが分かってきた。しばらくは対策に強弱を付けながら、新型コロナと付き合っていくしかない」と話している。(衣川圭)
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