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【安倍長期政権の功罪】地方創生、実り少なく 景気浸透せず人口減続く

2020/9/2 23:23

JR三江線の廃線路の隣を走る代替バス。草がレールを覆っていた(三次市作木町)

 2030年に人口5万人を堅持する―。三次市が15年10月に策定した「人口ビジョン」に盛り込んだ目標だ。安倍晋三政権の看板政策の一つ、地方創生に関連する国の交付金を受ける前提として、国は市町村に地方版総合戦略の策定を求めた。同戦略とセットになる人口ビジョンだが、5年前に掲げた目標は早くもかすんでいる。

 04年に1市7町村が合併した三次市。合併時に6万1823人だった人口は、5万1423人(8月1日現在)に減った。ビジョン策定時の人口は5万4712人。5年弱で3千人以上減っている。

 人口減少の克服と東京一極集中の是正を掲げる地方創生は、アベノミクスを推進する安倍政権が、地方に景気回復の実感を広げる狙いで15年度に開始した。しかし、東京都と埼玉、千葉、神奈川県への人口移動は19年、転入者が転出者を24年連続で上回り、転入超過は約14万9千人に上った。地方の人口流出は続き、転出超過になった39道府県のうち、広島県は最多の8018人となった。

 7月下旬の三次市議会全員協議会。人口ビジョンの改定を前に、市幹部は「田園回帰も進んでいる。ハードルは高いが、目指すべき目標だ」と答弁した。質疑した市議からは「近隣自治体と人口を奪い合うだけ」との冷めた声が漏れた。

 ■制限強い交付金

 15年度以降、国は年間1千億円規模の地方創生関連交付金を自治体に投入した。5年間で計約2億3500万円の交付金を得た三次市は、近隣自治体に先駆けた不妊治療の全額助成などの施策に充てた。19年4月まで2期8年市長を務めた増田和俊さん(74)は「自治体に知恵比べを促したことは評価できる。しかし、使途や金額の制限が強く、物足りなさは否めなかった」と振り返る。

 「国は地方創生を呼び掛けている。『三江線は知らん』とは言わせん」。三次市と江津市を結ぶJR三江線を廃止する方針をJR西日本が打ち出した後、三次市が同市作木町で16年5月に開いた住民説明会。同町の住民自治組織の役員を務める田村真司さん(70)は最前列で語気を強めた。

 ■国が「切り捨て」

 沿線自治体の首長や議会が存続を訴えたが、三江線は18年3月末に廃止された。田村さんは「切実な地元の声は、国に少しも響かなかった。『地方創生』と言われても、切り捨てられた側には言葉遊びにしか聞こえない」と断じる。

 作木町の人口は1252人(8月1日現在)。合併後の16年間で765人減った。人口に占める65歳以上の割合は51・5%。市内の旧市町村で最も高い。

 安倍政権の7年8カ月。地方の疲弊と人口減少にブレーキはかからなかった。経済成長の果実が行き渡らない現状に、地方の不満は根強い。ポスト安倍を争う自民党総裁選でも、地方創生政策の今後は大きな論点となる。

 元村議で、合併直後に市議を務めた田村さんは「地域の実情に応じて自由に使える財源を自治体に譲り渡す地方分権の原点に立ち戻るべきだ」と政策の質的転換に期待している。(石川昌義、小山顕)


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