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被服支廠、耐震費3分の1に圧縮も 湯崎知事、可能性言及

2020/9/4 22:59

 広島市内に残る最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)で、広島県の湯崎英彦知事は4日、1棟を保存・活用するのに必要な33億円のうち耐震化費用の28億円について、3分の1程度に減らせる可能性があると明らかにした。実現すれば、全3棟の耐震化費用を約30億円に圧縮できる。10月に始める詳細な調査と有識者の意見を踏まえて固め、本年度内にも新たな保存の方向性を示す。

 県は2017年度の耐震診断で倒壊の恐れを指摘されたのを受け、耐震化費用などを試算。県財政への影響などを考慮し、19年12月に「2棟解体、1棟の外観保存」とする安全対策の原案を公表している。

 県庁で記者会見した湯崎知事は「前提が大きく変わる。詳細な調査をして県の方向性を考える」と述べた。保存した場合の活用策は「分離して考える可能性がある」と展望した。

 県によると、コンクリートとれんが造りの被服支廠の周囲で同時期に造られ、安全面を理由に今年3月に撤去したれんが塀を用いて、れんが構造物の耐震性を探った。その結果、重要となるモルタルの継ぎ目の強度が、17年調査と比べて2・6〜2・7倍を示したという。

 今回の結果を基に、建物に筋交いを設けたり亀裂を補修したりして補強した場合の耐震性を簡易診断したところ、「震度6〜7の地震で倒壊する恐れが低い」との結果が出た。これまで必要とみていた免震装置も不要となり、費用が大幅に抑えられるという。

 当時は継ぎ目の強度について、業界団体の基準値を採用していた。湯崎知事は「建物の壁を使えず、試験できなかった。当時も専門家に聞きながらベストな調査をした」と説明した。

 県は10月、歴史的な建物に詳しい有識者たち6人でつくる検討会議を設置。強度や耐震性を詳しく検証し、概算費用を含む安全対策について12月末までに提案を受ける考えだ。複数の関係者によると、今月18日開会予定の県議会定例会に提案する20年度一般会計補正予算案に、約3千万円を盛り込むという。(樋口浩二)

 <クリック>旧陸軍被服支廠(ししょう) 旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設。1913年の完成で爆心地の南東2・7キロにある。13棟あった倉庫のうち4棟がL字形に残り、広島県が1〜3号棟、国が4号棟を所有する。県は、築100年を超えた建物の劣化が進み、地震による倒壊などで近くの住宅や通行人に危害を及ぼしかねないとして、2019年12月に「2棟解体、1棟外観保存」の安全対策の原案を公表。県議会の要望などを受け、20年度の着手は先送りした。4号棟は、所有する国が県の検討を踏まえて方針を決めるとしている。

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