【週末リポート 山本真帆】笠戸島ハイツ跡、活用か建て替えか 黒川紀章氏設計、下松市の方針定まらず
昨年4月に閉館した下松市笠戸島の宿泊施設「笠戸島ハイツ」の跡地を巡る市の方針が定まらない。日本を代表する建築家の故黒川紀章氏が手掛けた施設は老朽化のため解体される予定だったが、企業から施設利用の要望が出ると撤回。現在は運営業者を公募しているが、施設の継続利用か、建て替えか、市は明確な方針を示さず、業者のアイデアに頼る状態だ。
笠戸島ハイツは1975年4月、国が山口県勤労者福祉センターとして建設。2003年に政府の特殊法人の整理の一環で雇用・能力開発機構が市へ約2200万円で「投げ売り」した。04年からは西洋フード・コンパスグループ(東京)に貸し出したが、昨年3月に同社が運営から撤退した。
耐震基準を満たさない建物もあることから、市は昨年9月、施設を解体することを決定。公募で選んだ業者が新たな施設を建てて運営する方針だった。
■保存求める意見
ところが解体のニュースが流れると、企業や市民から「貴重な建物を残して活用できないのか」といった意見が寄せられた。そこで市は昨年12月、さら地にして新たな観光施設を建てる計画のほか、既存施設を使う道も含め笠戸島ハイツ跡地の運営業者を探す方向に切り替えた。
市は7月、公募型プロポーザル方式で笠戸島ハイツの跡地を活用する業者の募集を開始。島の観光振興に施設をどう生かすかについて事業提案させ、9月に運営業者を選ぶ予定だ。野村嘉彦契約監理課長は「参加表明は来ている。島の観光資源を生かし、周辺施設と連携した提案を期待している」と話す。
ただ、市のこうした二転三転する方針に地元では懸念の声も上がっている。その一つが笠戸島観光の主力施設である国民宿舎「大城」との関係だ。
大城は、笠戸島ハイツに先立つ71年にオープン。06年からは市の第三セクター「市笠戸島開発センター」が指定管理者として運営する。昨年度は約16万7千人が利用したが、本年度は新型コロナウイルスの感染拡大で6月末まで休業。料金収入で運営する三セクの経営が立ちゆかなくなる恐れがあるため、市は再び休業する事態に備え、市の直営に変更できるよう6月の市議会で条例改正した。
■「大城と共倒れ」
笠戸島ハイツの中庭で島の特産品レモンや海産物のPRイベントを開いてきた地元グループの守田秀昭代表は「新しいハイツは島の自然を生かした体験施設や気軽に立ち寄れる食堂など、市民と観光客の双方が楽しめる場所にしてほしい」と期待。一方で「ハイツと大城が競合し、共倒れになることにならないか」と懸念する。
国井益雄市長は「笠戸島は市の宝。今後も魅力発信に向け力を入れたい」と意欲をみせる。一方、狭い島で両施設が食い合いしないためにどうすみ分けを図るのかについては「事業者からさまざまな意見を聞いて共生の道を探りたい」と述べるにとどめる。
<クリック>笠戸島ハイツ 1975年開業のリゾート型宿泊施設。はなぐり海水浴場を見下ろす島の北部に位置し、鉄筋2階建て延べ約4700平方メートル。26の客室とレストランや大浴場、宴会場などを備える。黒川紀章氏が海と島を表現したというデザインは斬新で注目を集めた。2016年度には最多の約10万1千人が利用した。
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