コロナ下の避難所、感染防止で収容人数減り定員超過も 受け入れ方法見直す動き
最大級の警戒が呼び掛けられた台風10号の接近に伴い、九州地方を中心に多くの住民が避難所に身を寄せた。しかし、新型コロナウイルス対策のため収容人数を減らした影響で定員に達し、避難者の受け入れができなくなったケースが続出。大規模災害時の避難所運営と感染防止の両立の難しさを突き付けた。今後、特別警報級の台風にいつ襲われるか分からない中、中国地方の自治体で避難者の受け入れ方法を見直す動きが広がっている。
大部分が暴風や猛烈な雨に見舞われた九州西岸。長崎県五島市は6日、市内全域の約3万6400人に避難指示を出した。市の指定避難所40カ所のうち15カ所で定員に達し、小学校など20カ所に急きょ設けた避難所に移ってもらった。市総務課の担当者は「移動するのが怖いという声もあった」と明かす。
ほぼ全域が風速25メートル以上の暴風域に入った山口県でも同様の事態が起きた。山口市では開設した35カ所のうち3カ所で定員に達した。避難者1人当たりのスペースを従来の2・4倍の4平方メートルに広げた影響とみられ、計約60人が近くの小中学校へ移った。下関市、萩市でも一部の避難所で近隣施設に移る住民がいた。
▽廊下の活用模索も
避難所の感染防止対策を促す4月の国の通知を受け、避難者のスペースを拡大し、避難所を増設する自治体が相次いだ。しかし、避難所に適切な公的施設に限りがあり、対応に苦慮する自治体は多かった。今回の台風10号で、懸念通りの状況が相次いだ。
台風シーズンのさなか、避難者の受け入れ方法の見直しは待ったなしだ。広島市はマスク着用や手指の消毒の徹底を前提に、避難所内の廊下などを活用して定員を超過しても受け入れる方向で検討している。市災害予防課の玖島鐘二課長は「命を守ることが最優先」と話す。
廿日市市や呉市、広島県熊野町、山口市、松江市、岡山市なども同様の姿勢を示す。台風などが近づき、暴風や豪雨のため別の避難所に移ることが危険な場合、定員にこだわらない柔軟な対応が加速しそうだ。
また広島市、廿日市市、呉市、岡山市などは、定員に達しそうな避難所の情報を防災メールや防災行政無線で住民に周知することも検討している。
▽ホテルなど選択肢
広島経済大の松井一洋名誉教授(災害情報論)は「緊急時は感染リスクがあっても避難所の受け入れを断るべきではない」と強調する。これまで避難所に指定されていない地域の企業や私立学校などと調整し、有事に受け皿を広げることができる態勢を早急に整えるよう自治体に求める。
さらにホテルや親戚、友人宅への分散避難など、住民の避難に対する意識改革も必要と訴える。「早めの避難を意識し、一人一人が状況に応じた避難先の選択肢を持つことが大事だ」と呼び掛けている。(藤田龍治)
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