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林芙美子の直筆原稿不明 尾道市所蔵「放浪記第三部」など4点

2020/9/20 23:32

20日リニューアルオープンしたおのみち林芙美子記念館。関係者は「放浪記第三部」などの直筆原稿も展示できると期待していた

 尾道市所蔵とみられていた同市ゆかりの作家林芙美子(1903〜51年)の直筆原稿など少なくとも4点が所在不明になっていることが20日、分かった。市のリストにはあるが寄贈時の目録も見当たらず、現存したかどうかさえ確認できないという。遺品の多くはこの日オープンした地元商店街の「おのみち林芙美子記念館」に貸し出されたものの4点は事実上の棚上げ状態。市のずさんな管理には批判が集まりそうだ。

 市文化振興課によると、2004年以降に作成されたとみられるリストが同課に残っており直筆原稿や羽織、万年筆などの遺品、写真パネルなど全118点があった。見つかっていないのは直筆原稿「放浪記第三部」「浮雲」「雷鳥」のほか夫の原稿1点という。直筆原稿はいずれも芙美子のめいからの寄贈となっていた。

 市は文学のまちの目玉として1986年に同市東土堂町に文学記念室を整備。その前後から遺族から繰り返し寄贈を受けたとみられる。大半は今春閉館した記念室に残っていたものの4点は見つからないままという。村上幸弘文化振興課長は「10〜20年前の担当者に聞き取りしたが直筆原稿を見た人がおらずリストが何を根拠に作られたのかさえ分からない」とする。ただ、86年3月の本紙には記念室の開館に合わせて博田東平市長(当時)が3点の直筆原稿を夫から借り受けたとの記事も残っている。

 直筆原稿がそのまま市に寄贈されたり、遺族に返却されたりした可能性もあるが、こうした手続きに関する文書も見つかっていない。13年以降に作成された別のリストには直筆原稿の記載はないという。

 市中心部の尾道本通り商店街にある「おのみち林芙美子記念館」はこの日、記念室の遺品などを借りてリニューアルオープンした。運営にあたる顕彰会の山口真一副会長は「直筆原稿は目玉。見つかることを願っている」と話している。

 資料管理について広島県立歴史博物館(福山市)の久下実主任学芸員は「寄贈を受けた場合はまず目録を作成し、資料番号も振って保管する。手法は多様だと思うが、寄贈者や時期が不明にならないよう、目録保存やデータベース化は必須」と話している。(田中謙太郎)

 <クリック>林芙美子と尾道 家庭の事情で各地を転々としたが1916年から県立尾道高等女学校(現尾道東高)を卒業する22年まで尾道に居住した。後に代表作「放浪記」や「風琴と魚の町」で尾道を描写した。命日の6月28日前後には市民グループや商店街関係者が集まり、芙美子をしのぶ「あじさいき」を続けている。

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