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守り伝える松江城天守<上>国の宝、将来の大改修へ備え必要(2015年8月28日掲載)

2020/9/25 19:35
松江城天守の「昭和の大改修」時の写真を説明しながら、時代を超えた保存を訴える持田さん

松江城天守の「昭和の大改修」時の写真を説明しながら、時代を超えた保存を訴える持田さん

 松江城天守(松江市)の国宝指定を祝う市主催の記念式典が29日、開かれる。市民の祝賀ムードも盛り上がる。一方、天守を後世に伝えていくために不可欠な改修への備えなどの問題も見えてきた。国の宝をどう守り、まちづくりに生かしていくのか。課題を探った。

 1611年の創建から400年以上が経過した松江城天守。1950年から55年にかけて行われた「昭和の大改修」は、天守を一度解体し、原則同じ建材を再利用して復元する大工事となった。

 「明治の改修から約60年たち、外観は相当傷んでいた」。出雲市出身で着手当時19歳。10人の大工のうち最年少だった京都伝統建築技術協会理事の持田武夫さん(84)=京都府宇治市=は振り返る。5年間、工事に携わった。

 持田さんは今、松江城二の丸にある洋風建築「興雲閣」の保存修理工事監修のため、月に1度は現場を訪れ、そびえる天守を眺める。「60年たったが、柱は今もしっかりしている」

 ▽姫路城24億円

 2011年度から松江市が実施した天守の耐震診断調査でも「今後20〜30年間、大規模な補強工事の必要はない」との結果が出ている。だが、同市まちづくり文化財課の錦織慶樹副主任(61)は「いずれ改修工事は必要になる。天守改修のような大事業は10年近く前から準備する必要がある」とみる。念頭にあるのは、今春、改修工事を終えた同じく国宝の姫路城天守(兵庫県姫路市)だ。

 姫路城では、解体復元工事が終了した1964年から45年が過ぎた2009年、屋根瓦のふき替えやしっくいの塗り替えなどの工事を始めた。改修費は総額約24億円。うち姫路市の負担額は約8億4千万円に上った。

 ▽市に基金なく

 姫路城を除く他の国宝3天守は、改修などに備え、入場料を積み立てた基金を設けている。現在、約10億3500万円の基金がある松本城(長野県松本市)管理事務所の大竹永明所長(55)は「災害なども見据え、事前に準備していないと対応できない」と語る。

 松江城天守の14年度の入場料収入は1億8600万円。松江市は城の管理運営費に9500万円を支出するが、市には基金がないため、残りは一般財源に繰り入れられてしまっている。錦織副主任は「市財政が厳しい中、費用の捻出方法を今から考えなければいけない」と語る。

 文化財の修繕には高度な専門技術が必要。改修に向け、技術者の育成も課題だ。持田さんは「将来の大改修を見据えて、地元の大工が技を学ぶ機会を今から設けることが大事。保存は息の長い取り組み」と指摘する。

 持田さんは松江城天守改修を機に、時代を超えて残る建築技術の魅力に目覚め、全国で文化財工事に携わるようになった。「松江城は私の原点であり、国の宝。大切に守ってほしい」と願う。天守を後世に伝えていくための備えが求められている。(秋吉正哉)

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