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【週末リポート 坂本顕】岩国市、脱「立ち寄り型」観光へ模索

2020/9/26 21:35

昨年62万人が渡橋した岩国市の錦帯橋。錦帯橋以外の観光地への周遊を促すことが課題になっている

 国名勝・錦帯橋が架かり山口県内を代表する観光地である岩国市が「立ち寄り型」からの脱却を目指している。近郊の観光地とセットで訪れる傾向が強く、9割が日帰りで滞在時間も4時間未満。新型コロナウイルスの影響で近場旅が注目される中、広い市域に抱える観光スポットをいかに周遊してもらうか。発信力と連携が問われている。

 ▽錦帯橋止まり脱却期待

 昨年1年間で62万人が渡った五連のアーチ橋。全国に知られる観光スポットを有する同市には県内4位の320万人が訪れた。広島市から友人と初めて錦帯橋を渡った会社員斎藤洋子さん(25)は「迫力がある。自然豊かできれいな場所」と目を輝かせた。

 しかし、当地での観光は錦帯橋止まり。吉香公園内でソフトクリームを頬張った後、園内を1時間ほど散策してマイカーに乗り込んだ。「錦帯橋目当てだったので」と萩市へと向かった。

 岩国市にとって観光客の滞在時間が短いのが長年の課題だ。市観光振興課の昨年のアンケートでは89・9%が日帰り。うち94・8%は滞在時間が4時間未満だった。観光客の消費額単価も約8割が3千円未満。県内を訪れた県外からの観光客の平均7800円を大きく下回る。同課の小玉陽造課長は「広島や宮島などとのセットで訪れる人が多い。団体では錦帯橋を渡るだけで時間切れになるツアーもある」と分析する。

 ▽コロナで一変

 滞在時間を延ばそうと、錦帯橋周辺の観光施設は体験型メニューに力を入れる。17年に新設した観光交流所では岩国藩鉄砲隊保存会の甲冑(かっちゅう)を試着するイベントを企画。近くの美術館の五橋文庫では書画などに押す篆刻(てんこく)印作り体験を始めた。岩国シロヘビの館や新しい鵜舎も吉香公園に整備。5年前と比べると、2〜4時間滞在する人が39%から52%に増えてきていた。

 ところが、新型コロナの感染拡大で状況は一変。団体や遠方からの客足の回復は見通せず、小玉課長は「近場の個人旅行が当面の柱になる」とみる。2006年の合併で市域が広がり、中山間地域の豊かな自然環境や温泉、酒蔵、牛肉といった特産品など、豊富となった「地域の宝」が強みと期待する。県内や広島などからマイカーで訪れる人の割合が増えると予測し、点在する観光スポットを周遊してもらう仕掛けを考える。

 ▽ストーリー性

 さらに歴史をテーマにした旅などストーリー性を持ったモデルコースの提案に取り組む予定といい、「新型コロナの収束が見通せない今は、既存の観光資源の磨き上げの時期だ」と力を込める。

 ANA総合研究所(東京)の客員研究員で、岩国市内五つの観光協会などでつくる協議会の古川浩一観光戦略マネージャーは「施設が単独で宣伝するのではなく、訪れた人に『次はここに行ってみては』などと勧めるなど、横のつながりを深めることも大切だ」と指摘している。 

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