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【断て特殊詐欺】運び屋「100万円を500回」 裏バイト、生活費に充当

2020/9/26

 東京都内でコインロッカーから特殊詐欺の被害金を回収する「運び屋」だったとして盗品等運搬などの罪に問われた男(33)が広島地裁での公判で「100万円前後の運搬を500回ほど繰り返した」と供述していたことが分かった。単純計算で被害額は5億円に上り、男は週10万円を受け取り、家族の生活費に充てていた。「裏バイト」の募集に応じたのがきっかけで、素性も知らない「指示役」に脅され、抜け出せなかったという。29日、判決が言い渡される。

 ▽脅され抜けられず 29日判決

 男は、広島県警が4月に逮捕した熊本県玉名市の無職山下光輝被告。昨年10月に東京都台東区のJR御徒町駅のロッカーから区内のホテルまで被害金90万円を運んだなどとして二つの事件で起訴され、今年6月に始まった公判で手口が明らかになった。

 ▽週10万円家族に

 熊本から上京した山下被告が、ホテルで連絡を待っていると、指示役の一人から会員制交流サイト(SNS)のアプリ「テレグラム」でQRコードが載った写真が届く。駅のロッカーにかざして解錠し現金を回収。金額を数え、別のホテルで待つ「金庫番」と呼ばれる人間に渡したという。

 被告人質問では、起訴された事件以外にも昨年9月〜11月の約2カ月間で「500回くらい繰り返した」と供述。1回に100万円前後を運んだと述べた。単純計算で総額は約5億円。広島県内の昨年の被害額(3億2180万円)の1・5倍に上る。報酬は1週間で10万円だった。

 両親と妻、子ども3人を養う中、昨年6月に体調不良でアルバイトを解雇された。消費者金融に借金もあった。職が見つからず、SNSで募集中だった「裏バイト」に応募すると、仕事が入った。同7月、熊本県の高齢女性が130万円の被害に遭った事件で女性からキャッシュカードを受け取り、現金を引き出した。

 次に運び屋を紹介され、同9月上旬に上京した。案内されたホテルのベッドに大量の札束があり、犯罪に関わる仕事と直感した。ただ、生活を考えると後に引けなかった。家族には「先輩の仕事の手伝い」とうそをついた。週末になると熊本に戻り生活費を渡した。

 詐取されたと思われる現金を運ぶ日々。被害者のことを考えると、お金を見るのがつらくなった。指示役に辞めたいと伝えたが「(山下被告の)個人情報を持っている。子どももおるんでしょ」と脅され、抜けられなかった。

 「生活が苦しく、報酬を生活費に充てていた私にも責任がある。家族で夫を支えたい」。公判で証人尋問に立った妻はこう謝罪した。山下被告も「お金を稼ぎたい一心で1人で思い詰めた」と頭を下げた。

 ▽「使い捨ての駒」

 検察側は懲役3年6月、罰金30万円を求刑。弁護側は「反省している」と執行猶予付き判決を求めた。

 一連の犯行グループによる事件を巡り、警視庁や広島県警などでつくる合同捜査本部は山下被告のほか複数人を逮捕、捜査を続ける。ただ摘発されたのは末端の「受け子」や「運び屋」だ。

 福山大人間文化学部の平伸二教授(犯罪心理学)は、報酬がすぐに支払われるため、経済的に苦しい人がSNSなどで安易に応募していると分析。「末端は使い捨ての駒で、代わりはいくらでもいるというのが犯行グループの上位者の感覚。決して手を出してはいけない」と警鐘を鳴らす。(松本輝)

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