【学生アスリートの行き先 コロナ禍を越えて】<上>高校生 2年までの実績で進路
新型コロナウイルスの影響で活躍の場を奪われた高校や大学の選手が、進学や就職先を定めつつある。多くが最終学年での実績を欠く中、学校の支援や指導者の人脈を通じて進路を確保。一方、模索を続けたり、引退を選んだりした選手もいる。未経験のコロナ禍で夢と向き合う、中国地方ゆかりの学生アスリートの「今」を探った。
▽大会中止で競技やめる例も
「気持ちを落とさず、記録を伸ばすことを意識して練習してきた」。9月に広島市東区であった競泳大会の男子100メートルバタフライで広島県高校新を出した広島城北3年の松川晟士は胸を張った。晴れ舞台のインターハイは消えたが、2年までの実績で進学先が内定。大学での活躍を誓う。
春夏の甲子園大会が中止となった高校野球も、伝統校や強豪校では影響は目立っていない。野村祐輔(広島)ら大学経由で多くの好選手を送り出してきた広島・広陵の中井哲之監督は「大学と信頼関係があるので、プレーを見なくても『広陵の推薦なら』と引き受けてもらえる」と話す。
ラグビーの広島・尾道やサッカーの広島・皆実など全国常連校も例年並みの進路を確保した。尾道は大学の練習会に参加できなかったが「映像で確認してもらった。これまでのつながりも後押しした」と田中春助監督。ボクシングで全国優勝した広島・崇徳3年の梶原嵐や黒田丈二朗らも志望校に決まった。
大学側も特例で迎える。広経大は「都道府県大会のベスト4以上」と定めていたスポーツ推薦入試の出願資格を「同ベスト8以上」に緩和。約200人をスポーツ推薦で受け入れる環太平洋大は、大会実績がなくても高校が実力を保証すれば出願できるようにした。
ただ、選手のモチベーションや環境に落とした影は小さくない。広島県高体連陸上専門部の大林和彦委員長は「例年なら大学で続けるレベルの選手が、インターハイ中止で競技をやめたケースが多い」と明かす。他競技では、3年時の記録が振るわず大学の推薦基準に届かなかったり、家庭の経済環境の悪化で進路先を首都圏から地元大学に切り替えたりした生徒もいる。
女子プロゴルファーを目指す広島市安佐北区出身の岡山理大付3年益田世梨も岐路に立つ。今夏から受験予定だったプロテストが来春以降に延期。「進学かゴルフ場研修生になるか。プロになるのが第一。早めに決めないと」と悩む。
2年生の進路への懸念も広がる。伸び盛りの時期に練習や大会ができず「例年より実力が備わっていない」との声も。1月のバレーボール全日本高校選手権女子16強の広島桜が丘の門田岳史監督は「3年生と違い、2年生は全国実績がほとんどない。今後も大会があるか分からない」。不透明な来年以降に不安は隠せない。
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