【ひと まち】詐欺を防いだ父思う心
2020/10/6 23:31
住宅街にある広島市南区の段原東浦郵便局。9月5日午後3時すぎ、現金自動預払機(ATM)の前で順番を待っていた菊池修さん(47)=東区=は、携帯電話で話しながらATMを操作するおばあさんが気になって仕方なかった。「特殊詐欺ではないのか」。おばあさんに近寄ると、「早く電話を切って」と求めた。
頭をよぎったのは、大分県別府市で一人暮らしの父だった。安否確認のため仕事の合間に電話をしては「何かあったらすぐに相談してよ」と伝えている。被害が相次ぐ特殊詐欺も心配の種だ。「警察を呼びましょう」と促す菊池さんに耳を貸そうとしないおばあさんの説得を続け、広島南署に通報した。捜査の結果、特殊詐欺と判明した。
同署によるとこの日、おばあさんの携帯電話に電話料金に関するメールが届いた。おばあさんがメールにある番号に電話をすると、通信会社をかたる男に「手違いで26万円を引き落としたのでATMで返金操作を」と言われた。郵便局に行き、ATMの前で再び電話し、指示されるがままに操作した。菊池さんが声を掛けたのは、まさにその時だった。
今月1日、被害を防いだとして同署から感謝状を受け取った。おばあさんは80代で1人暮らしと聞き、「弱みにつけ込む犯罪は許せない」との思いを強くした。同署によると、コンビニ店員や金融機関の職員が被害を防ぐケースは増えているが一般市民は珍しい。
菊池さんは広島中央自動車学校(西区)の教官で、応急救護の講習も担当。日頃から生徒に積極的な行動を促している。「特殊詐欺を防ぐには、人命救助と同じく人ごとと思わず勇気を持って行動すること」。父にも早速、今回の件を報告した。(寺本菜摘)
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