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稲生物怪録の絵巻、見つかった 三次の妖怪博物館で「里帰り」公開
旧広島高等師範学校の教員だった故及川大渓(たいけい)さん(1974年に82歳で死去)の著書の表紙に使われた後、所在が不明になっていた稲生物怪(いのうもののけ)録の絵巻を、国際日本文化研究センター(日文研、京都市)が古書店で入手した。15日に三次市三次町の妖怪博物館で始まる日文研と連携した特別展「京都からやってきた妖怪たち」で公開する。
及川さんの著書は「芸備の伝承」(73年)。江戸時代の三次を舞台にした妖怪伝説、稲生物怪録のうち、魔王をかごに乗せた妖怪の行列が空に舞い上がる様子など、3場面の写真を表紙と口絵で紹介していた。「芸備の伝承」では「及川大渓蔵」との記述があったが、広島県立歴史民俗資料館(小田幸町)などの調査では所在が分からなかった。
日文研が東京の古書店で絵巻を見つけ、5月に購入した。後半の29場面を描いた絵巻の描写や、場面のつなぎ目の形状などから及川さんが所蔵していた絵巻と特定。1849(嘉永2)年の作であることも確認した。
稲生物怪録の主人公、稲生武太夫の同僚である柏正甫(せいほ)が武太夫から聞き書きした「柏本」を基にしたとみられる。県立歴史民俗資料館の元館長で稲生物怪録に詳しい奥田元宋・小由女美術館(東酒屋町)の植田千佳穂館長は「長い間、探し続けていた資料。現物を見て『あっ』と驚きの声が出た」と発見を喜ぶ。
日文研の所蔵資料約150点を紹介する妖怪博物館の特別展では、5場面を順次紹介する。日文研の木場貴俊プロジェクト研究員は「三次での展示後はデジタル資料としてインターネット公開したい」と話す。
特別展は12月22日まで。水曜休館。Tel0824(69)0111。(石川昌義)
<クリック>稲生物怪録 江戸時代中期の1749(寛延2)年7月、三次に住む16歳の稲生平太郎(後の武太夫)が経験した怪異を伝える物語。絵本や絵巻のほか、文章が中心のものなど多くの種類がある。文章は、武太夫の同僚、柏正甫による聞き書きのほか、本人の体験談形式、国学者平田篤胤を中心に整理したものに分類される。
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