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家庭内の性被害「黙ってたら変わらない」 原告「心にふたをしてきた」

2020/10/16 23:19

当時の記憶や気持ちを書き出したメモを手に、体験を語る女性

 ▽「魂の殺人」今も苦しい

 幼少期から中学生まで父親からの性的虐待に苦しんだという広島市内の40代会社員女性が、中国新聞に自身の経験を初めて語った。ほかの家族との関係悪化を恐れ、長年、声を上げられなかったが「今もつらい気持ちが消えず、提訴を決意した。父にも、社会にも、『魂の殺人』だと分かってもらいたい」と訴える。

 最初の虐待の記憶は、保育園児の頃。自宅で父親と二人きりの時、父親の膝の上でアダルトビデオを見せられた。体を触られるなどの行為は、女性が成長するにつれてエスカレート。小学4年のクリスマスの日、性交を強要された。その後も続いた行為に何度も抵抗したが、力で押さえ付けられた。「死にたいぐらい嫌な気持ちになった」と打ち明ける。

 厚生労働省によると、2018年度に全国の児童相談所が対応した性的虐待は1730件。児童虐待防止法が施行された00年度の2・3倍に増えた。ただ、性的虐待は傷が見えるわけでもなく、周囲に気付かれにくい。支援者たちは「表に出ているのは氷山の一角」と言う。

 女性の母親は精神的に不安定で入退院を繰り返しており、相談できなかったという。父親が逮捕されたらどうなるのか。愛情を注いでくれる祖父母に知られたら悲しい思いをさせてしまう…。自分の心にふたをし、口をつぐんできた。

 当時のことを思い出すフラッシュバックの症状が出始めたのは、3年前に祖母が亡くなってから。ことし、きょうだいとの同居を解消し、1人暮らしを始めた。「もう誰にも遠慮しなくていい」と思えるようになり、ようやく声を上げる決心がついたという。

 「誰にも言えず我慢している被害者はほかにもいるはず。みんなが黙っていたら何も変わらない」と女性。「子どもが家庭内の性被害を訴えることなんてできるはずがない。何年前のことだとしても、罪は罪なんだと認めてほしい」

 性犯罪は17年の刑法改正で厳罰化された。親などの「監護者」が立場を利用して18歳未満に性的な行為をすれば、暴行や脅迫がなくても罰することができる「監護者わいせつ罪」などが新たにできた。

 被害を告発する米国発の「#MeToo」(私も)の運動、性暴力を撲滅しようと訴える「フラワーデモ」が全国で広がり、被害者の声は響き始めている。20年3月には、実の娘に対する準強制性交罪に問われて名古屋地裁岡崎支部で無罪になった父親が、二審で逆転有罪判決を受けた。

 NPO法人全国女性シェルターネット共同代表で広島大の北仲千里准教授(社会学)は「記憶のふたを閉じ、訴えを起こすエネルギーを持てない被害者はまだ多いが、自分が怒ってもいいんだという考え方がようやく広がりつつある。勇気を振り絞って立ち上がった被害者を理解し、支えることが社会に求められている」と強調した。(馬上稔子)


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