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妖怪 今も昔も<4>件(くだん) 人面牛 世情不安で出現(2020年8月24日掲載)

2020/8/24 15:04
件像(昭和時代後半)

件像(昭和時代後半)

 「件(くだん)」は、江戸時代から出現の記録が見られる予言獣である。漢字が示す通り、人と牛とが一体になった姿の妖怪だ。生まれてすぐに予言を行い、数日のうちに死ぬという。

 予言の内容は、豊凶や疫病の流行。また、厄よけの方法として自らの絵を張り置くよう伝えることは、アマビコや神社姫など、他の予言獣と共通する。しかし、件以外の予言獣が、近代になると次第に取り沙汰されなくなっていくことと比較すると、件は息の長い予言獣であった。

 明治時代に現れた時には日露戦争を予言し、昭和の太平洋戦争時には終戦を予言したという。世情が不安定になると、顔を出す妖怪なのである。ではなぜ、他でもない「件」なのか。件の多くは、牛から生まれる。これこそ、件が生まれ続けた理由の一つだろう。牛の出産に立ち会うことは、農家では近代以降も身近な出来事だった。

 世の中からすっかり不安が無くなってしまえば、件のような妖怪は活躍の場を失い、現れなくなるのだろう。それは、なかなか難しそうである。妖怪といかにうまく付き合っていくかが大事なのだろうなと、件像の不敵な笑みに見詰められながら思うのであった。(妖怪博物館学芸員 吉川奈緒子)=展示内容は記事掲載日現在

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