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妖怪 今も昔も<6>人魚 肉食べると不老長寿に(2020年8月26日掲載)

2020/8/26 15:19
人魚の皿(江戸時代以降)

人魚の皿(江戸時代以降)

 片肘をついて寝そべる、おおらかな姿の人魚の皿である。人と魚とが一体となった人魚は、奈良時代の歴史書「日本書紀」にも記述が見られる古い妖怪である。

 日本の各地に現れたことが記録される人魚だが、若狭国(現在の福井県)小浜を舞台とした「八百比丘尼(はっぴゃくびくに)」の伝説は特に有名だ。ある漁師がとらえた人魚の肉を、親しい人にふるまったが、みんな気味悪がって食べなかった。しかし、ある少女だけが口にしてしまう。その少女は、その後老いることなく年を重ね、尼となり諸国を巡った後、800歳を超えて没した、という。

 さて、この人魚の皿は、京都府の旧家に伝わっていたものである。人魚の肉が不老長寿をもたらすとされた伝承にあやかり、実際に長寿の祝いの席で使われていたという。魚介の刺身などを盛り、人魚の肉に見立てて食べていたのだろう。

 人魚の優しいまなざしの先には、その昔、この皿を囲んだ人々の笑顔の団らんがあったことが想像できるのである。(妖怪博物館学芸員 吉川奈緒子)=展示内容は記事掲載日現在

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