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文化勲章2人、沸く中国地方 奥田小由女さんと澄川喜一さん

2020/10/27
奥田元宋さんの母校、八幡小の児童に自作を解説する小由女さん=手前左端(2018年4月27日、三次市の奥田元宋・小由女美術館)

奥田元宋さんの母校、八幡小の児童に自作を解説する小由女さん=手前左端(2018年4月27日、三次市の奥田元宋・小由女美術館)

 中国地方に27日、歓喜と祝福の声がこだました。文化勲章を受ける人形作家の奥田小由女さん(83)は三次市で高校卒業まで過ごした。彫刻家の澄川喜一さん(89)は島根県吉賀町出身で、岩国市の高校を卒業した。つながりのある人たちは、豊かな自然や文化に抱かれて育った2人の変わらぬ郷土愛や人柄を思い起こし、末永い創作活動へエールを送った。

 ▽【奥田さん】美術界リード「誇り」 三次、交流児童の「心に財産」

 小由女さんと、同郷の夫で1984年に文化勲章を受章した日本画家奥田元宋さん(2003年に90歳で死去)の作品を所蔵する奥田元宋・小由女美術館(三次市)。植田千佳穂館長(66)は「旺盛な創作活動を続ける一方、元宋先生と同じ日展理事長として美術界をリードする大きな存在。受章は郷土の誇りだ」と吉報に声を弾ませた。

 小由女さんの初期の代表作で72年に日展特選となった「或(あ)るページ」などを展示している同館の常設展示室は、12月下旬から来年3月にかけて、照明の発光ダイオード(LED)化などの改修を予定する。植田館長は「小由女先生にも展示のアドバイスを頂いた。よりよい環境で夫妻の作品を鑑賞できる場をつくりたい」と張り切る。

 堺市で生まれた小由女さんは2歳の頃、母の実家があった三次市吉舎町に移り住んだ。元宋さんも学んだ同町の日彰館高を卒業し、人形作家を志して上京した。同校同窓会の春田佳伯(よしのり)会長(74)は「東京での同窓会でお会いするたびに『古里を元気にしたい』という熱意を感じた。刺激になる話を後輩に聞かせてほしい」と願う。

 同町の美術館あーとあい・きさでは、小由女さんが01年に寄贈した人形「春耀(しゅんよう)」を常設展示している。夫妻と半世紀近い交友がある茶道裏千家淡交会三次支部幹事長の奥田節子さん(78)=同町=は「東京の自宅に招いてもらった際、古里の自然の話題になると、ほっとしたような表情を見せてくれる。温かい人柄が作品ににじんでいる」と話す。

 18年には元宋さんの母校、同町の八幡小の児童を奥田元宋・小由女美術館に招き、自作を解説した。同校の湯浅るみ校長(56)は「児童が郷土学習で取り組んだ夫妻の作品の模写を大変、喜んでくれた。『新鮮な感性で本物の美を味わってほしい』『夢は必ずかなう』という小由女さんのメッセージは、子どもの心に一生残る財産になった」と振り返る。

 三次市は14年、小由女さんに名誉市民の称号を贈った。市は27日、祝意を示す懸垂幕を市役所に掲げた。福岡誠志市長は「小由女先生は帰郷の際、多忙な中でも時間を割いて市民との触れ合いを大切にしてくれる。より一層の活躍を願っている」と感謝した。(石川昌義)

 ▽【澄川さん】故郷「創作のベース」 島根や岩国、末永い活動へエール

 「石見地方の芸術文化をリードしてきた方で、本当に喜ばしい」。澄川さんの受章の知らせを聞き、島根県芸術文化センター・グラントワの鎌谷正文副センター長は破顔した。澄川さんは2005年の開館当初からセンター長を務める。グラントワボランティア会の高橋和男会長(80)は「いつも感謝してもらっており、やりがいがある。これからも支える」と誓いを新たにした。

 澄川さんは1970年代から、日本家屋や日本刀の反りに着想を得た「そりのあるかたち」シリーズを創作する。グラントワ内の県立石見美術館の左近充直美専門学芸員は「現代彫刻の第一人者。木を無理に加工せず、木と対話して必要な形を残している」と強調。澄川さんは素材へのこだわりも強く、上質な木を見つけた時は、魚のトロに例えることもあるという。南目美輝学芸課長は「作品の形ではなく、『木を見てほしい』という言葉がとても印象深い」と語る。

 島根県吉賀町の出身で、名誉町民でもある。山や川に囲まれた少年時代を原風景に、木の造形物が造り出す美しさを追求してきたという。同町出身者の文化勲章の受章はデザイナー森英恵さん(94)に続いて2人目。森さんからはこの日、「創作のベースには故郷の自然があると共感しています。ステキな作品を創りつづけて下さい」とのメッセージが寄せられた。岩本一巳町長は「人口6千人余りの町から2人とは本当にすごく、喜ばしい」と話す。

 岩国市の旧制岩国工業学校(現岩国工高)で青年時代を過ごし、「錦帯橋の曲線が創作の原点」と繰り返し語ってきた澄川さん。折に触れて会っているという元参院議員で市文化協会名誉会長の藤谷光信さん(83)は「今後も芸術を志す地元の若者にメッセージを発信してほしい」と喜んだ。

 岩国工高の校庭には彫刻2作品がある。同窓会会長の菊川尊樹さん(65)は「在校時に所属していた野球部のOB会費は今も払っていただいている。岩国や母校に強い愛情があるのだろう」と声を弾ませた。

 市内には市役所ロビーなど計11カ所に彫刻作品が点在。市文化芸術振興プランの策定委員長や県民文化ホール「シンフォニア岩国」の名誉館長も務めてきた。同ホールの若林英樹館長(55)は「待ちに待った受章。キャッチフレーズの『まだまだ、創る』の言葉通り、元気に創作を続けてほしい」と願う。(根石大輔、永山啓一、坂本顕)


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  • 三次市に寄贈した作品を、東京の自宅から搬出する作業に立ち会う奥田小由女さん(左から3人目)と元宋さん(右端)。作品は現在、同市の奥田元宋・小由女美術館が所蔵している=2002年1月17日
  • 奥田元宋・小由女美術館の開館を祝い、テープカットする小由女さん(左から4人目)たち(2006年4月15日)
  • 三次市民ホールきりりの落成式でレリーフを紹介する奥田さん(2014年11月23日)
  • 自らデザインした贈答用ピオーネの化粧箱を手にする小由女さん(左)と三次ピオーネ生産組合の石田博人組合長(当時)=2017年9月2日
  • 澄川さんがライフワークとして取り組む「そりのあるかたち」シリーズを紹介する南目学芸課長
  • 岩国工高の正門付近にある澄川さんが製作したモニュメント

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