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防火体制の不備、今も 流川火災、老朽化などが壁

2020/10/28 23:10

 広島地裁で28日に有罪判決が言い渡された広島市中区流川町の雑居ビル火災は発生から丸5年がたつ。6人死傷という重大な結果を招いた火災は、多くの人が集まる歓楽街の防火体制の不備を浮き彫りにしたが、今なお消防法や建築基準法に抵触する建物は少なくない。建物の老朽化は進み、入居店舗の営業形態も多様化する。あらためて防火対策が問われている。

 【写真】流川雑居ビル火災 火災当時〜現在

 火災現場は、ネオン街を南北に貫く流川通りと薬研堀通りの間の路地にある。火元の雑居ビルは火災の翌月に解体が始まり、その後は駐車場に姿を変えた。今、当時を想起させる物は残っていない。

 雑居ビルは1948年築の木造瓦ぶきの2階建てで、飲食店やメイドカフェが入居していた。耐火性は低く、個室に仕切られた複雑な構造も被害を大きくした。

 近くで飲食店を長年営む佐古純一さん(69)は、一帯に煙が充満して騒然とした現場の様子が忘れられない。「あんなひどい火事は記憶にない」。重過失失火罪などに問われた元飲食店店長に有罪判決が出たと知り「3人の命が奪われた。責任は取らんといけん」。かみしめるように話した。

 5年前、火災が問うたのは歓楽街などに立ち並ぶ雑居ビルの防火体制だった。

 市消防局は火災直後、飲食店や風俗店が入る管内の木造施設への立ち入り検査を開始。消防法に違反する施設への改善指導を続けるが、今年4月時点で対象の278施設のうち、なお半数近い131施設(47・1%)で計198件の違反が確認された。違反の内訳は避難訓練の未実施が66件と最多。防火設備の点検結果の未報告46件、防火管理者の未選任22件と続いた。

 「歓楽街は出店や退店が激しく、そのタイミングで手続きの不備や認識不足が重なり、違反状態になっている」と市消防局予防課の加納敬士課長。建物のオーナーや店長に繰り返し対策を求めるが、火災の記憶が薄れているとも感じる。

 建築基準法に抵触する建物も残る。市は火災後、飲食店が入る一定規模以上の木造建築物の22施設を対象に立ち入り調査を実施。17施設で壁や柱が耐火構造ではなかったり排煙設備がなかったりした。市は是正指導を続けているが、約6割の11施設は今も改善されていない。市は改修に多額の費用がかかり、休業が必要になることが動きを鈍くしているとみる。

 行政も手を打つ。市と市消防局は情報共有を強めるための仕組みを整えた。市は飲食業の営業許可申請の内容を消防局に送信。消防局は開店前に防火指導をし、その際に増改築や用途変更が分かれば市の担当課に連絡する。違法状態を速やかに把握する狙いだ。

 現場近くの薬研堀町内会の山重憲三副会長(60)は、町内会や商店街などでつくる任意団体の事務局長として歓楽街で防火の呼び掛けを続けている。「街の安全は建物の所有者や店長の意識によるところが大きい。いま一度、街全体で意識を高めたい」と誓う。(山田英和)

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  • 火災が起きた雑居ビルの跡地。今は解体されて駐車場になっている=広島市中区流川町(画像の一部を修整しています)

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