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【コロナ禍と介護】縮むサービスの中で<上>通所やめて弱った母 感染を懸念「守りたかった」

2020/11/12 23:13

母を支え、自宅の廊下を一緒に歩く女性。母はもう一人では歩けなくなってしまった=広島市西区(撮影・山崎亮)

 92歳の母の足腰は一気に弱ってしまった。外出には車いすが欠かせない。家では歩行器にすがらせ、腰を支えながら歩く。新型コロナウイルスが騒ぎになる前の2月には、階段を上れていたのに。やはり、デイサービスを休ませるべきじゃなかった―。そう思うと、女性(68)は悲しくなる。

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 女性は母と2人で広島市西区に暮らす。母に週2回のデイサービスの利用を控えてもらったのは、3月下旬から5月の連休明けまで。「まだ通わせとるの? うちはやめたよ」。友人の言葉に焦りが募った。感染から母を守りたかった。

 ▽うつ症状が悪化

 家で横になることが増えた母は足が弱ったのか、4月下旬に通院先の病院で滑り、腰をひどく打った。車いすのレンタルを始めたのは、その頃だ。元々、友人とのおしゃべりが大好きな母。自粛生活がこたえたのだろう。元からあったうつ症状も悪化した。「コロナで死んでもいい」。そんなことまで口にした。

 サービス利用は再開したが、また事件が起きた。6月半ば、今度は夜中のトイレに起きた母が転倒し、背骨を折った。入院先の病院では週に1度、家族1人にしか面会が許されない。しかも、たった5分間。「寂しかったんでしょう。2カ月の入院で母の認知症も進んでしまった」

 時折、困り果てた病院の看護師から電話がかかってきた。「お母さんが帰りたがって…」。そのたびに「頑張らんと。コロナだから毎日は会いに行けんよ」と励ました。

 退院する時、医師に施設入所を勧められたが、女性は母の「家に連れて帰って」という言葉に寄り添うことにした。今はデイサービスに加え、月2回のショートステイを取り入れ、在宅介護を続ける。幸い、母のうつ症状も落ち着いてきた。「何とか現状を維持しないと」と女性は言う。今後も、できる限り、サービス利用を続けるつもりだ。

 ▽機能回復に時間

 高齢期に2週間寝たきりで過ごすと、7年分の筋肉を失う―。日本老年医学会(東京)はそんなデータを示し、コロナ禍の中にある高齢者に警鐘を鳴らす。感染を恐れるあまり外出を控えすぎると、体や頭の働きが鈍る「生活不活発病」になりかねない。しかも高齢者は機能がいったん衰えると回復に時間がかかり、元の状態に戻りにくい。

 「深刻さを分かってもらえない。いまだにサービス利用を再開してくれない人もいるんです」。市内の居宅介護支援事業所に勤めるケアマネジャーの女性(59)は頭を抱える。

 担当する女性はもうじき90歳。夫を亡くした後、一人で家にこもりがちになるのを防ごうと、週2回の通所リハビリを組み込んだ。しかし、5月に本人がコロナを理由に中断。「マスクをするのがきつい」「今日は他の用事がある」と行き渋り、もう半年が過ぎた。

 最近、足元のふらつきが目立つ。主治医から「このままでは歩けなくなるよ」と話してもらったが、女性は聞く耳を持たない。「無理強いはできないけれど、弱っていくのを放ってはおけない。どうすればいいですかね」(田中美千子)

    ◇

 新型コロナウイルスは介護という営みも直撃している。高齢者は感染すると重症化のリスクが高い一方、ケアには「3密」が避けられない。当事者や家族、ケアワーカーたちにどんな影響が出ているのか。国内に「第3波」が押し寄せる中、中国地方の現場に迫った。 

【コロナ禍と介護】縮むサービスの中で
<上>通所やめて弱った母 感染を懸念「守りたかった」
<下>家族孤立「もう限界」 寝不足続き、つい怒鳴る日も

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