東広島の乳児遺体遺棄 技能実習生、異国で孤立 周囲は妊娠に気付かず
東広島市志和町で乳児の遺体が見つかった事件で、産んで間もない子の遺体を遺棄した容疑で逮捕された母親でベトナム国籍の技能実習生スオン・ティ・ボット容疑者(26)=同町志和西=は、出産したとみられる11日の前後も実習先に出勤していた。ただ、医療機関に通った形跡はなく、従業員たちも妊娠に気付いていなかった。異国の地で孤立を深めていた技能実習生の姿が浮かぶ。
「従業員たちは『最近、太ったね』と感じていたようだが、まさか妊娠していたとは思わなかった。なぜ相談してくれなかったのだろうか」。スオン容疑者の実習先である東広島市内の会社の男性社長は、後悔をにじませながら語った。
社長によると、11日朝、出勤したスオン容疑者の体調が悪そうだったため、途中で帰宅させた。その後、女児を産んだとみられる。
翌12日も朝から出勤。この日も顔色が悪く、社長は「おなかが小さくなっていたのが分かった」。異変を感じて詳しく聞くと、最初は「大丈夫」と話していたが、「子どもを埋めた」と打ち明けた。説明通りに自宅となっている寮の庭を掘ると遺体が見つかったという。
スオン容疑者は今年1月から実習を開始。同社の農場で週5日、野菜の収穫などに従事していた。遅刻はなく、真面目な仕事ぶりだったが、日本語はあいさつができる程度だった。定期的な相談などは、受け入れを仲介した広島市内の監理団体が担っていた。ただ、団体の担当者も取材に「妊娠は把握していなかった」と話した。
人手不足などを背景に、実習生の受け入れは増加傾向にある。一部の企業や監理団体では、妊娠を理由に実習生へ中絶や帰国を迫る事例が問題化。法務省などは2019年3月、企業や監理団体に不当な待遇をやめるよう文書で注意喚起している。
一方、スオン容疑者の実習先と監理団体はいずれも、「『妊娠すれば帰国させる』との規定は設けていない」と説明する。妊娠を周囲に伝えなかった理由は分からないという。
今回のケースは、公的な支援からも漏れていた。東広島市こども家庭課によると、スオン容疑者は母子手帳の交付を受けていなかった。「医療機関を受診していなければ情報を得るのは難しい」とする。近くの住民たちも、接点はほとんどなかったと証言している。
同市の市民団体、広島ベトナム平和友好協会の赤木達男専務理事は「国は外国人材に依存しているのに、公的なサポートは遅れている。どこでも起きうる問題で、国や自治体による実態把握と支援の体制づくりが必要だ」と指摘している。(長久豪佑、堅次亮平、高橋寧々)
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