• トップ >
  • トピックス >
  • 【コロナ禍と介護】最期は「大切な人と」 増える在宅みとり、面会制限の病院避けて

トピックス

【コロナ禍と介護】最期は「大切な人と」 増える在宅みとり、面会制限の病院避けて

2020/11/16 22:14

母をみとった自宅で思い出を語る男性(手前)と姉。母が文書に残した希望に寄り添った=広島市南区(撮影・山崎亮)

 新型コロナウイルス禍の中、わが家での「みとり」を望む人が中国地方でも増えている。病院や介護施設では感染防止のために面会が厳しく制限され、家族が最期の時を一緒に過ごせない場合があるからだ。

 広島市西区の安部敦子さん(80)は9月下旬、夫章蔵さん(享年81)を家でみとった。老々介護は厳しい。いずれは緩和ケア病棟へ―。そう考えていた時期もあったが「在宅にして良かったと、今は心から思います。かけがえのない日々でした」と、安部さんはほほ笑む。「コロナがあったからこそ、踏み切れたのかもしれません」

 夫のおなかにがんが見つかったのは、昨年の暮れだった。抗がん剤治療が始まったが、これが相当つらかったらしい。夫は半年後、治療をやめたいと訴え、病状がどんどん悪化していった。

 病院からは入院を勧められた。でも、通院に付き添うたび、院内放送が「患者との面会を制限する」と繰り返す。夫は一人で治療に耐えられず、駄目になるんじゃないか…。不安が募った。近所の居宅介護支援事業所に相談すると、介護用品のレンタルや訪問看護などが受けられるようになった。「家でみよう」。いつしか心は決まっていた。

 ▽濃密な時過ごす

 できるだけ一緒にいようと、介護ベッドは居間に据えた。隣に寝床を並べ、たくさん話した。夫の手足を毎日さすり、排せつがうまくいくと一緒になって喜んだ。亡くなる前日、東京の長男も駆け付けた。市内の次男も、しっかりお別れができたよう。「最期まで家でみてくれてありがとう」と言ってくれた。

 そんな最期の日々をつづったノートは、安部さんの宝物になった。夫から寄せられた感謝の言葉も書き留めてある。「濃密な時間を過ごせたからか、今も夫が心の中にいるような気がします」

 安部さん一家を支えたコールメディカルクリニック広島(西区)によると、緊急事態宣言が出た4月以降、在宅みとりを希望する依頼が相次ぎ、10月末までの件数は前年同期比で3割ほど増えた。病院からの紹介が多いという。

 ▽希望、文書に残し

 南区の自営業男性(58)も9月半ば、母が緊急入院した病院で選択を迫られた。市内の施設に入っていた93歳の母は腸捻転と脳梗塞を発症。医師はリハビリ病院への転院を勧めたが、母は倒れる前、希望する最期について文書に残していた。「自宅で大切な人との時間を十分に持ちたい」と。

 コロナ禍の中で入院させれば、母の願いに背くばかりか、死に目に会えないかもしれない―。男性は母を家に連れ帰る決意をした。母の故郷の台湾に住む姉2人も急きょ、駆け付けた。

 わが子に囲まれ、うれしかったのだろうか。母は病院では何も食べられなかったのに、アイスクリームを口にした。まひしていた右手も動かした。テレビ電話で孫に笑顔を見せた。別れの日は、退院から9日目に訪れた。男性は「おしゃべり好きの母をひとりぼっちにせずに済みました」と振り返る。

 訪問医として見守った折口医院(中区)の高橋浩一院長は「人生で何を大切にしたいか。最期の時をどう過ごしたいか。早めに考えておくのは大事なこと」と言う。「コロナをきっかけに家族で話し合ってみてほしい」(田中美千子、衣川圭) 

【コロナ禍と介護】縮むサービスの中で
<上>通所やめて弱った母 感染を懸念「守りたかった」
<下>家族孤立「もう限界」 寝不足続き、つい怒鳴る日も


  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

トピックスの最新記事
一覧

  • ブラックホール停止の原因解明 東京大・筑波大・尾道市立大チーム発表 (1/26)

     宇宙の多くの銀河の中心にある「超巨大ブラックホール」は、他の銀河との衝突で活性化するだけでなく、中心部と衝突すれば活動が止まるとの研究結果を、東京大、筑波大、尾道市立大の研究チームが26日付の英科学...

  • 廿日市で民家全焼、住人が不明 (1/25)

     25日午後6時20分ごろ、廿日市市の無職男性(79)方から出火、平屋の家屋や、小屋など計約210平方メートルを全焼した。廿日市署や市消防本部によると、1人暮らしの男性と連絡が取れていない。近くの住民...

  • 石橋氏、広島3区支部長「内定」どまり 自民 (1/25)

     自民党は25日、衆院広島3区の新たな支部長に、党広島県連が次の衆院選で擁立を目指す新人で県議の石橋林太郎氏(42)を内定した。広島3区は公選法違反罪で公判中の河井克行元法相(57)=自民党を離党=の...

  • 広島3区「公明に譲り比例へ」勘ぐる声 自民県連 (1/25)

     与党分裂の可能性が出ている次の衆院選広島3区で、自民党広島県連が党本部に求めてきた石橋林太郎氏の党支部長への就任は、25日時点で「内定」にとどまった。「決定」を期待していた党県連内には一歩前進との受...

  • 「女性になりたい」…法の壁は高く【虹色のあしたへ 性的少数者と社会】<1> (1/25)

     「女性になりたい」。広島県内に住む30代会社員ハルさん(仮名)は、妻に静かに切り出した。妻は顔色を変え、なじった。「うそつき。私は男性と結婚したんだよ」。2人の間には3人の子どもがいる。その子たちに...