【コロナ禍と介護】会えぬ母、募る不安 面会制限、施設もジレンマ
週に1度の面会。アクリル板越しの母(88)は顔色がいい。広島市佐伯区の介護施設で、自営業山本哲也さん(62)=西区=は胸をなで下ろした。ただ許された時間は15分。あっという間に過ぎる。「元気でおるんよ」。職員に手を引かれ、自室に戻る母にそう声を掛けた。
▽「もっと一緒に」
「本当はもっと一緒にいたい。でも仕方ないです」と山本さんは言う。新型コロナウイルス禍の中、施設の多くは面会を厳しく制限している。4月半ばに母を預けた当初は、一目も会えない日が続いた。「あれは本当にしんどかった」
山本さんは父の死後10年間、母と2人で暮らしてきた。工場に勤め上げ、家計を支えてくれた母は、心のよりどころでもある。認知症が進んでも介護に尽くした。仕事は母をデイサービスに預ける間と、母が夜中に寝入った後にこなした。千葉に住む妹水野稔子さん(59)も、毎月のように帰ってきて母をみてくれた。
わが家で自分と暮らすのが一番。まだ頑張れる―。そんな思いが揺らぎ始めたのは、母が体調を崩すことが増えたから。今年4月には意識を失いかけ、救急搬送された。コロナ禍の中、もう妹は頼れない。デイサービスもいつ休止になるか分からない。仕方なく、母を病院から施設へ移した。
それからは不安と寂しさが押し寄せた。大事にされているか。ちゃんと食べているのか…。職員に電話し、母の写真を送ってもらったこともある。
やっと気持ちが落ち着いたのは6月に入り、この施設が面会の制限を緩めてから。約50日ぶりに会った母は穏やかな表情だった。「施設でも良かったと初めて思えた」。今の願いは制限がなくなること。「そうしたら毎日通う。でも当面、厳しいですよね」
▽認知症が悪化か
厚生労働省は10月半ば、全国の介護施設に求めてきた面会制限について、緩和してもいいとの方針を示した。家族と会えないことが高齢者に深刻な影響を及ぼすことが分かってきたからだ。認知症の悪化につながるとの指摘もある。ただ対応は各施設に委ねる。「第3波」が押し寄せる中、現場は頭を悩ませている。
「家族の訪問は入所者の一番の楽しみ。何とかしたいけれど…」。広島県東部の介護施設に勤める女性職員(45)はため息をつく。4月以降、面会をシャットアウト。ストレスがたまるのか、うつ傾向が強まり、泣いてばかりいる入所者もいたという。
10月に窓ガラス越しの面会を認めると、涙ながらに再会を喜ぶ家族もいた。だが、これも続かなかった。地域で新たな感染者が確認され、今はまた面会を断っている。テレビ電話で「オンライン面会」ができるようにもしたが、認知症があり、画面越しでは家族と分からない人も多い。利用は伸び悩んでいる。
「制限はやり過ぎだと以前は思っていた」と、この職員は明かす。だが、同業者から三次市内の介護施設で感染者集団(クラスター)が起きた時の話を聞き、気持ちが揺らいできたという。万一、感染者を出したら、ケアが必要な人にサービスを提供できなくなる。その上、すさまじい誹謗(ひぼう)中傷に遭ったら―。「過剰なまでの対策を打つ施設としての考えも分かる気がする。心苦しいです」(田中美千子)
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