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【研究室発】「星の一生」の謎 やめられない 広島大宇宙科学センター・稲見華恵助教(天文学)
無数の星が広がる夜空。月のそばにある真っ暗な領域のわずかな点を望遠鏡で拡大すると、さらに何千もの銀河が見えてくる。距離にして約100億光年先。「ぶつかったり、消滅したりと、はるかかなたの星一つ一つに物語がある。そのスケールに魅了されます」。広島大宇宙科学センター(東広島市)の稲見華恵助教(36)は目を輝かせる。
宇宙はどう始まり、進化しているのか―。天文学に挑む人の多くが抱く問いに、「宇宙の星がなぜ生まれ、今の姿になっているのか」という観点からアプローチする。
▽包括的に調査
最近の研究対象は、138億年前とされているビッグバンから約40億年後の光が届いている領域。事前に対象とする銀河を選んでいた従来の観測法に替え、精度の高い南米チリのアルマ望遠鏡で、3次元の立体的な領域を包括的に調べた。
捉えた光の波長などを基に銀河の位置を特定。これまで原料の分子ガスやちりが少ないと思われていた暗い銀河に、想定以上のそれらが存在することを突き止めた。研究成果は9月下旬、グループで発表した。
▽観測会で解説
自らのライフワークについて、専門外の人に知ってもらうことも重視する。市内外でのサイエンスカフェや、同大の天文台で開く子ども向け観測会にも積極的に参加。「『へー』って反応をしてくれるのが面白い。知的好奇心を刺激したい」
父の赴任先の台湾で生まれた。小学生の時、家族旅行で沖縄県の石垣島を訪れ、満天の星に心を奪われる。高校生の時に来日。数学は苦手だったが、宇宙への憧れを捨てきれず、明治大理学部へ進んだ。
総合研究大学院大(神奈川県)での院生時代はほとんどを米国で過ごし、盛んに星を生み出している高光度赤外線銀河を対象に研究した。目で見えない光も捉える望遠鏡で見た星の美しさを知り、さらにのめり込んだ。30歳の誕生日パーティーでは、カリフォルニア州の天文台を友人と借り、30光年先の光を観測した。
銀河は大量のちりやガスでできているとされる。ただ、ビッグバンからほんの数億年で、初期の銀河を形成するほどのちりがなぜ生まれたのかは分かっていない。ちりは超新星爆発でばらまかれるが、そうだとしたらビッグバン直後に非常に重い星があったことになる。「一つ解決しても、また別の謎が出てくるから研究はやめられない。いつかは宇宙誕生の謎に迫りたい」(堅次亮平)
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