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岩国れんこん、ヌートリア禍 農作物被害、山口県内で急拡大
外来種ヌートリアの農作物被害が山口県内で広がっている。2012年度に初めて捕獲されるなど中国地方の他の4県に比べ生息が確認された歴史は浅いが、水稲や野菜の被害金額が急増しており、19年度は500万円を超えた。岩国市の特産「岩国れんこん」の被害が目立ち始め、農家は警戒を強めている。
「植え付けたレンコンをまとめて食べられる。作業が忙しい時期は余計にしんどい」。岩国市尾津地区に広がる岩国れんこんのハス田で今月、生産出荷組合の前組合長、村本康則さん(58)はため息をついた。
被害が出始めたのは約5年前。ハス田の周囲に張り巡らされた水路を通って移動し、春の植え付けから秋の収穫まで長期間、食べられるという。村本さんの田も今年、植え付けた12カ所のうち4カ所が被害に遭った。
「被害は年々増えている。駆除して生息する密度を減らすしかない」と村本さん。同組合はこれまでに防除方法を学ぶ研修を2度受け、各農家が箱わなを仕掛けている。
市農林振興課によると、岩国れんこんの19年度の被害は約12アールで22万円。ただ栽培面積に対する例年の収穫実績で換算するため、農家が種レンコンを再度植え付けるなどした場合、数字に表れず、被害はさらに大きいとみられる。
市全体の19年度の捕獲数は27匹で3年前の1匹から急増した。市は今春見直した市鳥獣被害防止計画の対象にヌートリアを追加した。
山口県内の農作物被害は2013年度に初めて確認された。被害額は17年度から3年続けて2倍を超える増加となっている。
中国地方は長年ヌートリアの食害に苦しんできた。岡山県では1960年代から有害鳥獣として捕獲が始まり、近年も農作物の被害額が年1千万円を超える。広島県でも70年代後半から捕獲の記録が残る。島根、鳥取県は90年代ごろから被害が広がった。
分布や生態に詳しい島根県中山間地域研究センター鳥獣対策科の金森弘樹科長は「岡山から分布が広がり、山口にもついに山陽、山陰の両側から入ってきたとみられる。被害実態をつかみ、水路の草刈りをするなど適切な防除をしないと被害は拡大する恐れがある」としている。(有岡英俊)
<クリック>ヌートリア 大型ネズミの一種で南米原産。第2次大戦中、毛皮用として日本に持ち込まれ西日本を中心に飼育。戦後に野生化した。水辺に生息し、水生植物を好む。稲や野菜類を食い荒らすため、2005年に環境省が特定外来生物に指定した。年2、3回繁殖し、1回に5、6匹を産む。
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