【コロナ禍と介護】テレワークに助けられ 仕事と両立、穏やかな時間
新型コロナウイルスの影響で企業などに広がったテレワークに「助けられている」という人がいる。高齢の親を持つ介護世代だ。
広島市佐伯区の中村美子さん(58)は、母菊子さん(享年84)を5月に自宅でみとるまでの2週間余り、ずっとそばにいた。生命保険会社の営業職。若手をまとめるマネジャーだ。「最期の日々を一緒に過ごせたのは、家で仕事をできたおかげです」と力を込める。
胃がんで弱る母の気配にすぐ気付けるよう、介護ベッドのある部屋の隣の部屋を「仕事場」にした。母の姿を目の端に入れながら、顧客や部下と電話のやりとりを重ねた。
菊子さんがおなかの痛みを訴えたのは、美子さん一家と同居を始めて間もない今年の春先。医師からは「もう手の施しようがない」と告げられた。その頃、市内でも新型コロナが猛威を振るい、病院では面会禁止が当たり前になっていた。美子さんにとって幸運だったのは、時を同じくして、職場で在宅勤務が始まったこと。迷わず、母を家に連れ帰った。
休日には、母の郷里の芸北に2人でドライブもできた。「母に寂しい思いをさせずに済んだ。在宅の制度がなければ、仕事は辞めざるを得なかったかもしれません」
▽感染防ぐために
西区に住む50代の事務職女性も「働き方が変わり、本当に助かります」と実感を込める。在宅勤務と介護サービスを使いながら、最も重い要介護5の母(90)と2人で暮らしている。
月3、4回は母に朝食を食べさせた後、食卓でパソコンを開く。データ処理や資料作成に打ち込む間、母は隣で新聞を眺めたり、塗り絵をしたり。穏やかな時間が流れる。
「テレワークをさせてほしい」と、上司には4月に願い出た。同じ部署では前例がなく、非正規の立場。「ダメ元のつもりでした」。それでも、母にデイサービスを休んでもらい、自分で見守りたかった。「感染したら命に関わりますから」。職場は、その願いを快諾してくれた。
母は6月からデイサービス利用を再開したが、女性は頻度を減らしながらも在宅勤務を続ける。その日は母も家で過ごす。「思った以上に効率よく働ける。感染リスクを減らせるし、実は経済的にも助かるんです」。いまの環境に感謝している。
▽許されぬ職場も
一方、テレワークが許される職場ばかりではない。山口県東部の60代女性は「コロナで仕事と介護の両立が厳しくなった」と嘆く。
父(92)との2人暮らしはこれまで、訪問介護の利用で成り立ってきた。しかし、頼みの綱の事業所から「県外との往来がある人と接触したら、10日間はサービス提供を見送らせてもらう」と通知が来た。職場は時折、感染者が多い都心部への出張がある。「Go To」を使い、旅行する同僚もいる。お土産の菓子箱を職場に見つけるたび、女性はひやりとする。
先日は悩んだ末、同僚たちが東京出張から戻ってくるのに合わせて1週間、仕事を休んだ。「黙っていれば介護事業所には分からない。でも万が一、職場で感染したら、多大な迷惑を掛けますから」。ただ、だからといって何度も休めば、仕事を失いかねない―。女性は先の不安を拭えずにいる。(田中美千子)
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