地域ニュース
長年のずさん管理、露呈 尾道市、林芙美子ゆかり直筆原稿紛失
尾道市は10日、同市で少女期を過ごした作家林芙美子(1903〜51年)ゆかりの人物の直筆原稿2点を紛失したと正式に発表した。一連の問題では原稿を市が受け取った際の記録文書が見当たらず、東京の博物館が所蔵する資料を市のリストに誤って記載するなど、長年のずさんな管理状態が明らかになった。「文学のまち」を名乗るにふさわしい再発防止策が求められる。
市がこの日開いた記者会見。小玉高嘉企画財政部長は冒頭、「資料リストの更新、物品の取り扱いが不十分だった。申し訳ない」と頭を下げた。紛失した原稿2点は、芙美子の夫緑敏(りょくびん)による「林芙美子のこと」と、同時代の女性作家吉屋信子の「暮春のあの夜」。吉屋の原稿は複製だけ残っていた。
2点は芙美子の母校である尾道東高から寄託され、多くの関連資料を管理していた市の文学記念室(3月閉館)で展示していた。いずれも市が2012年に原本を撮影しており、紛失はそれ以降とみられる。村上幸弘文化振興課長は「担当者に聞き取りしたが原因は分からない」とした。調査を打ち切ったという。
80年代以降、市は遺族や同校からたびたび原稿や遺品を受け取ってきたが、管理は長年ずさんだった。寄贈や寄託の際に通常作成するはずの記録が見当たらない。所管課は少なくとも3回変わり、学芸員ではなく事務職員が1人で担当。度重なる異動で情報共有がされにくい構造もあった。
【関連記事】
記念室の閉館後、同課が資料整理をする中で2点の所在不明が発覚。さらに04年ごろ作成とみられる資料リストには、芙美子の直筆原稿「放浪記」「浮雲」「雷鳥」の3点が市の所蔵として誤記されていた。同課は、資料貸与を希望した市民有志でつくる顕彰会にリストを提供。誤解を与え、現物を所蔵する新宿歴史博物館(東京)への確認も9月まで怠った。
市は芙美子を含む文学者たちの関連資料約1200点について、年度内に台帳を新たに作成する方針。小玉部長は「寄贈時の記録は現在は必ず作っている。資料を展示などで動かす際は複数人で立ち会う」と強調する。
福山市立大の八幡浩二准教授(博物館学)は「資料管理の甘さは組織的問題」と厳しくみる。「学芸員など専門人材の薄さも背景にある。他市の管理手法にも学びながら、信頼回復に努めるべきだ」と指摘する。(田中謙太郎)
山口県和木町地域包括支援センターが実践する町民ぐるみの健康づくりが成果を上げている。高齢者の介護予防と自立支援を目的に、独自の体操教室を開催。介護保険の要支援認定を受けた人のうち半数の要介護度が改善...
周南市中須南の国道376号沿いに、疫病よけの妖怪「アマビエ」の巨大なイルミネーションが登場した。新型コロナウイルスの収束を願う地域の住民たちが点灯した。
尾道市が解体を予定している、名誉市民の洋画家小林和作(1888〜1974年)の旧居について、認定NPO法人「尾道空き家再生プロジェクト」が活用に名乗りを上げた。有志で資金を集めて市から買い取り、今後...
折り鶴を連ねたレイ(首飾り)のプレゼントを通じ、世界中の人たちと平和の願いを分かち合う取り組みが再び動き始めようとしている。広島市西区の高橋史絵さん(83)が10月、広島を訪ねて来た外国人に手作りの...
尾道市は10日、同市で少女期を過ごした作家林芙美子(1903〜51年)ゆかりの人物の直筆原稿2点を紛失したと正式に発表した。一連の問題では原稿を市が受け取った際の記録文書が見当たらず、東京の博物館が...