昆虫食べて体重減「栄養満点です」 山口大の井内准教授、健康成分研究
熱湯でゆでた後、フライパンにオリーブ油をひいてさっと炒める。山口大農学部の井内良仁准教授が塩こしょうとカレー粉を振り、慣れた手つきで皿に盛った。「栄養満点なんですよ」と差し出したのはセミにコオロギ、ガの幼虫…。「完全に酒のつまみだ」と笑いながら頬張った。
山口大で「昆虫食」の研究を始めて9年。専門は食品機能化学で、健康に役立つ食の成分を日々探している。その食品の一つが虫だ。
■中性脂肪を抑制
肥満につながる高脂肪食をネズミに食べさせつつ、バッタやコオロギを与えると、内臓脂肪や血中の中性脂肪を抑える効果が見られた。虫を粉末にし、お茶を入れるようにして成分を抽出する実験では、肌の老化や病気の一因となる活性酸素を抑える抗酸化の値が野菜や果物より高いことも分かった。現在、どの成分が作用するのか分析している。
「人間にも効くのか」。そんな疑問の声を受けて3年前、自ら昼食の1品を昆虫にした。主に炒め物。1カ月半でコオロギ約1300匹、蚕のさなぎ約100匹など計1・3キロの虫を食べた。すると体重が4キロ減少。「続けたかったけど、学生に実験用の虫がなくなると言われてね。やめたらリバウンドしました」と笑う。
徳島県出身。幼少期から虫が好きで採集にいそしんだ。昆虫食と出合ったのは山形大医学部で助教になった1995年。山形県内のスーパーではイナゴのつくだ煮が日常的に並んでおり、ビールと一緒に味わうようになった。活性酸素の研究を始めたのはこの頃だ。
2010年に山口大農学部へ移り、山形での研究を生かして「昆虫食」の分野を開拓した。ただ「それは建前。何より虫が好きだからね」。今も休日は山口市内の池でゲンゴロウ捕りに熱中する。
記者が研究室を訪れるとセミやガの幼虫のカレー炒めでもてなしてくれた。材料の虫は夏場に学生がキャンパス内外で捕り、冷凍庫に保存していた。お薦めはガの幼虫のサクラケムシ。「その名の通りサクラの葉を食べるから、味わいは桜餅のよう」。ゼミ生の大学院1年尾崎知美さん(23)も「ジュースにするとおいしい。お店にも並べられる」と得意げに話した。
悩みもある。「子どもも大人も虫を嫌う人が増えている」。かつて学習ノートの表紙を飾った虫は、教師や保護者から「気持ち悪い」などと不評になり採用されなくなった。
■試食会通じPR
虫に興味を持ってほしい―。そんな思いで13年度から年1回、キャンパスで「昆虫試食会」を始めた。クモと野菜のかき揚げや、バッタと豆腐を練り込んだハンバーグ、セミ入りポップコーンなど学生が考えたメニューを提供。100人以上を集めた年もある。
「最初は興味本位でいい。食べることで虫の魅力に気付いてほしい」。最終目標は、自然観察を通して理科好きの子どもを増やすことだ。そのためにも昆虫食が多くの家庭の食卓に並ぶ日を夢見て、今日も虫と向き合う。(山下美波)
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