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【詳報・案里被告第29回公判】弁護側の最終弁論<5>

2020/12/24 0:10

(3)被告が領収書の発行を受けていない点について

 被告は、上記5名から、現金を授受したことを証する領収書の発行を受けていない。また、下原県議は、同県議から領収書の発行を打診したにもかかわらず、被告がこれを断ったと証言している。検察官は、こうした点を捉え、被告が領収書の発行を求めなかったのは、いわゆる表にできない裏の金である、つまり違法性を認識していたからであると主張するようである。

 しかしながら、陣中見舞いについては、個人から候補者個人に対する選挙運動に関する寄付として認められており(政治資金規正法第21条の2)、また当選祝いについては、その他の政治団体に対する個人からの寄付として年間150万円の範囲内で認められているものである(同法第22条第2項)。そして、陣中見舞いは候補者の選挙に関する収支報告として、当選祝いは候補者の政治団体の収支報告として記載すべきものであって、受領した側において法に従って適切に処理することが求められているものである。一方、個人としての寄付者は、税務上において寄付金控除(所得控除)を受けるつもりがなければ、あえて領収書の発行を求める必要はないし、領収書の発行を受けることが義務づけられているものでもない(所得税法や租税特別措置法その他の関連法令は、個人が支払った政党または政治資金団体に対する政治活動に関する寄付金で一定のものについて、支払った年分の所得控除としての寄付金控除の適用等を受ける場合の確定申告手続きを定めているが、こうした控除を受けるつもりがなければ、寄付金支払いを証する領収書の発行を受けたり求めたりする必要のないことは当然である)。この点、寄付金を支出した政党支部において、領収書等の証ひょうと合わせて収支報告をすることが義務化されている場合とは異なるのである。

 上記5名は、岡崎県議を除き、被告が領収書の発行を求めなかったため、裏金、すなわち違法な金であると認識したかのように証言するが、上記のとおり被告は個人で寄付し、寄付金控除を申告するつもりもなかったから領収書の発行を求めなかったにすぎない。岡崎県議が証言するように、お祝いなどで儀礼的に受け取った金員については、殊更に領収書のやりとりをすることなく、収支報告書にも記載せずに個人的に自由に使えるお金として扱うということは、厳密さに欠ける点があるとしても、一般常識を逸脱したものとは言い難い。にもかかわらず、領収書の発行を求められなかったからといって直ちに受け取る現金が裏金であって違法なものであるとの認識を抱いたというのは、あまりにも唐突かつ不自然であり、検察官が描いた特異なストーリーに乗っかっただけの荒唐無稽な証言と見るべきである。

 また、検察官は、政治家たる被告が、政治家たる県議らに対して寄付を行うことは被告の政治活動ではないのかと決めつけた上、領収書を徴求した上で自民党広島県参議院選挙区第7支部の収支報告書に記載すべきであったと主張するようであるが、そもそも、同支部から支出するのではなく、個人の私的資金から支出する以上は、政治家が個人として寄付することを禁止する規定もないことから(岡崎県議も、当選祝いというものは個人としての行為であると認識していた旨を証言している)、同支部の収支報告書に載せる必要がないことは自明である。検察官の指摘は、寄付の主体が誰かという点を無視しており、論理性に欠けている。

 結局、被告が領収書の発行を求めなかったという事実は、前記のとおり、単に被告が岡崎県議らに渡した現金について寄付金控除を受ける意思がなかったことを示すものにすぎない。また、被告は、かねて生活費の残金やお車代等として受け取ってたまっていた現金を自宅に保管しており(いわゆるたんす預金)、この私的な資金を原資として同県議らに現金を渡したことから、前記収支報告書に記載する必要もなく、そのための領収書も必要なかったのである。よって、被告が領収書の発行を受けなかったことは、何ら買収の意図を裏付けるものではない。

3 岡崎県議について

(1)被告との関係

 岡崎県議は、平成6年に初当選以降現在に至るまで8期連続で当選を続けているが、平成6年から平成29年までの間、前記自民会に所属していた。同県議は、被告の政治家としての資質を高く評価し、被告を日頃から「案里ちゃん」と呼び、自宅に招いて食事をするなど、被告とは公私共に非常に親しい関係にあり、時に冗談を言い合う気の置けない間柄であった。

 また、同県議は、自民会に所属する県議として前記県知事選において候補者として被告を擁立し、その選挙運動を積極的に支援した。その後、同県議が、平成23年に県識に復帰した被告を自民会に招き入れ、以前と同様に温かく接してくれたことから、被告は、同県議に対して大きな恩義を感じていた。
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