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【詳報・案里被告第29回公判】弁護側の最終弁論<3>

2020/12/24 0:08

第3 罪体について

1 被告と克行被告との共謀が認められないこと

(1)被告が克行被告と共謀した事実はなく、被告と克行被告との共謀を裏付ける証拠はないこと

 検察官は、後記のとおり、いわゆる「リスト」を金科玉条のごとく重要証拠として立証の柱に据えた主張を長々と展開し、異常なほどの執着を見せているが、「リスト」は、基本的には間接証拠にすぎない上に、あくまで被告との関係においては、克行被告において、被告が県議ら4名に現金を供与したことを事後的に聞き取り、それを自らのパソコンに入力したにすぎないのであって、これに被告が現金を供与した県議ら4名の名前や金額が入力されていたからといって、何ら被告および克行被告との共謀を裏付けることにはならない。また、被告と克行被告が夫婦である以上、相互に意思の連絡があったはずだというのは合理的根拠を欠いた単なる臆測にすぎず、本件における被告と克行被告との具体的な共謀を裏付ける事情ではない。

 以下、詳論する。

(2)検察官が主張する証拠構造は著しく論理性に欠け、不可解であること

検察官は、(1)本件選挙における被告陣営の活動の取り仕切り役であった克行被告が、名簿を用いて被告と克行被告のいずれが現金供与をするのかを検討した上、自ら大半の現金供与を行い、被告が行った現金供与分も把握し、現金供与全体の実績を正確に記載したリストを作成管理していたこと、(2)岡崎県議、奥原県議および安井裕典県議については被告および克行被告の双方から現金供与またはその申し込みが行われているところ、両者で意を通じながら互いにタイミングをはかりつつ行っていたと推認できること、(3)高山博州県議が被告に克行被告が供与していた現金を返そうとしたところ、被告が驚いたり同県議に質問したりすることなく、受領を拒んだことや同県議がなおも被告のバッグ内に封筒を差し入れると被告がこれを取り出して机上に置いて同県議にもらい受けるよう求めたことは、克行被告の行為とあいまって同県職への現金供与を遂行していると認められることを挙げ、公訴事実第1に係る岡崎県議ら4名の県議に対する現金供与につき、被告および克行被告の共謀が成立することは明らかであるなどと主張する。

 まず、(1)について、仮に克行被告が首謀者として全体の絵を描き(供与の分担等の計画を立て)、その一部を被告に実行させ、その結果も報告させて把握していた(その実績をまとめたものが「リスト」)という趣旨に通じるものだとすれば、範囲としては「事前共謀」として、現金買収の計画ないし予定の段階で克行被告と被告が何らかの意を通じていたことが必要になるが、本件においては、直接、間接を問わず、そのような証拠は皆無である。後記のとおり、名簿は、克行被告が被告と相談したりその了解を得たりすることなく、勝手に作っていたものであり、リストも、克行被告が事後的に被告から聞き取り記載しただけのものである。被告において、当時、克行被告による現金供与の全体はおろか、その一部さえ知らされていたことを示す証拠は一切見当たらないし、被告が岡崎県議、平本県議、奥原県議に現金を渡すことについても、事前に克行被告から指示されたり、克行被告と相談してその了承を得たりすることなく、被告自身の判断で行ったものである。(2)については、被告と克行被告の双方がそれぞれ別の機会に同じ相手に現金を渡し、または渡そうとしたというだけで、被告と克行被告が互いに意を通じて調整を図っていたというのは解せない理屈であり、首をかしげざるを得ない。現金を渡し、または渡そうとした相手方が重なっていたということは、要するに分担になっていないということであり、むしろ、互いに話し合っていないからなってしまったと言うべきである。(3)については、高山県議からの返金の申し出を断ったのは、後記のとおり被告のあずかり知らないことであったからにすぎない。被告があらかじめ克行被告による高山県議に対する現金供与を認識していたことを前提としなければ成り立たない推認であり、検察官の主張は重要な点が欠落しており、著しく非論理的と言わざるを得ない。そもそも、検察官の上記主張によれば、高山県議に対する現金供与の実行行為は克行被告の行為によって完成していなかったということになるのか、克行被告と被告の共同(順次)実行という趣旨なのか、不可解この上ない。いずれにしても、被告は、この高山県議に対する現金供与については起訴されていないのである。

 ちなみに、上記(1)ないし(3)は並列するものではなく、(1)は立証命題、(2)および(3)は間接事実に相当するものと考えられるところ、上記のとおり、(2)は不可思議な理屈であり、(3)はいくつもの前提を置かなければ「推認」にさえ及ばないものであって、結局、検察官の上記主張は臆測に頼らざるを得ないのである。

 仮に、上記(1)が肯定され、かつ検察官が胡子市議について述べるように、本件一連の現金供与による利益享受の主体が被告であるとすれば(この点については後に詳論する)、被告は、公訴事実第1のみならず、公訴事実第2も含めて克行被告との共謀で起訴されるべきことになると思われるが、実際には、克行被告との共謀で起訴されているのは、公訴事実第1に係る県議・市議合計5名に対する現金供与だけで、公訴事実第2は、克行被告の単独犯として起訴されているのであって、検察官の証拠構造は矛盾に満ちており、明らかに破綻を来している。
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