地域ニュース

【詳報・案里被告第29回公判】弁護側の最終弁論<2>

2020/12/24 0:07

(3)被告および被告陣営の活動状況

 被告は、前記のような戦略の下、公示日前においては、政治活動あるいは選挙準備行為として、公示日からは選挙運動としてさまざまな活動を展開した。

 この点に関し、検察官は、被告が県連の支援を受けられなかったことに危機感を抱いていたことを前提とし、被告陣営が行った公示前の政治活動は、すべからく選挙運動、すなわち事前運動に当たるかのように位置づけた上、そうした中で行われた本件公訴事実第1記載の各行為が選挙運動の期間前における買収に当たることは明らかであるかのように主張している。

 まず、被告が、県連の支援を受けられなかったことに危機感を覚えていたという前提が誤っていることは前記のとおりである。

 また、広義の政治活動は選挙運動を含み、その中から選挙運動を除いたものが狭義の政治活動であると一般に説かれるように、選挙運動との境界は必ずしも明確ではない。ましてや、議員として政治活動を行うためには、選挙において当選して議席を獲得しなければならないことは自明であり、にもかかわらず、議席獲得を念頭に置いた政治活動がおよそ選挙運動として公選法上、事前運動に当たり処罰の対象となると解することは暴論と言わざるを得ない。

 すなわち、立候補のための瀬踏み行為、2連ポスターの掲示、立候補決意の通知行為、地盤培養行為、後援会活動や後援会の組織作り等の政治活動は公選法上何ら禁止されるものではない。仮にこれらの活動すらもできないとなれば、本件の被告のように新人として選挙に立候補する者は、極めて短い選挙運動期間に限って、自らの政策を有権者に訴えることができるだけで、それ以前においては自らの政策に対する支持や政治家としての自身への支援を呼び掛けることは許されないということにもなりかねない。そうした解釈が、新人候補の政治活動等を著しく阻害し当選を困難にすることはもとより、現実に広く行われている、選挙の公示ないし告示前の政治活動を不当に制限し民主主義の根幹をゆるがせる理不尽な見方にほかならない。

 なお、検察官は、克行被告の公設秘書の藤田一秘書、案里被告の元公設秘書、克行被告の公設秘書の光元博美秘書および元陣営スタッフ女性の各証言を引用し、同人らが違法な事前運動をしていたと評価できる内容の証言をしているなどと指摘している。しかしながら、藤田秘書は、公示前の活動について当時は違法な選挙運動をしていたという認識はなかった旨証言し、光元秘書も、公示前のどのような活動が公選法上認められていないのかよく理解していなかった旨証言している。また、元公設秘書は、「心の中では公選法に違反すると思っていた」と証言し、「短期間に、いままでにない方に、いままでにない量の印刷物をお届け」したことをその理由としているようであるが、いつ、誰に、何を何部配布したのか全く明らかではない。後記のとおり、一般には認められている公示前の活動を、このような抽象的な証言のみをもって違法と断じることはできない。さらに、元陣営スタッフ女性は、今までに選挙に関わったことはなく、公選法についての知識もないままに証言しているのであるから、同人の証言をもって被告陣営の公示前の活動が違法な選挙運動であったと断じることもまたできない。

 以下、被告や被告陣営が公示日前に行った活動について詳述する。

ア 被告の活動開始時期

 4月7日、前記統一地方選の前半戦が行われ、広島県においても、県議選、広島市長選および広島市議選が執行された。また、同月21日、同統一地方選の後半戦が行われ、市町村の首長選および市町村議選が執行された。
(ここまで 1493文字/記事全文 6510文字)

会員限定の記事です
  • 無料登録して続きを読む
  • ログインする
  • キャンペーン
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

アーカイブの最新記事
一覧