地域ニュース

【詳報・案里被告第29回公判】弁護側の最終弁論<6>

2020/12/24 0:11

4 平本県議について

(1)被告との関係

 平本県議は、平成27年に初当選し、4月の前記統一地方選で再選された、現在2期目の県議であり、また、被告と同一会派である自民会に所属していた。

 被告は、上記統一地方選において再選を目指していた同県議の個人演説会に応援弁士として招かれたものであるが、いまだ支持基盤がさほど固まっていない2期目の選挙は往々にして厳しい戦いとなることもあり、先輩県議として同県議の再選に力を貸したいと考えていた。特に、同県議の選挙区は大災害に見舞われた地域であり、同県議にぜひとも当選して復興に尽力してほしいと考えていた。

 被告が、県議会を「卒業」して国政に進出するに先立ち、このように同じ会派に所属していた後輩である同県議に対し、応援弁士として選挙協力するとともに、その今後の活躍を願い、激励などの意味を込めて統一地方選における陣中見舞いを持参することはごく自然の成り行きであり、何ら疑わしいところは感じられない。

(2)現金授受の状況およびその趣旨

ア 現金授受の状況およびその趣旨

 被告は、国信自治会館での個人演説会が終了し、同県議およびその妻とともに来場者にお見送りのあいさつをした後、妻に対し、「大変ですけれども頑張ってください。陣中見舞いです。」などと言いながら、現金30万円入りの白い封筒を渡そうとした。妻は、いったん受け取りを断ったものの、被告から促され、それ以上拒否することなく、白い封筒を受け取った。このように被告が妻に対し、上記現金を渡した際、買収の意図をうかがわせるような言動は一切なかった。

 なお、妻は、被告から白い封筒を差し出された際に被告から陣中見舞いという言葉はなかった旨を証言するが、その一方で、被告が差し出した封筒の中に入っているお金については陣中見舞いかなと思った旨の証言もしていること、いったん受け取りを拒んだのも、違法なお金という認識からではなく、お世話になっている被告から受け取ってもいいのだろうかという遠慮からである旨を証言していること、被告が妻に対して現金入りの封筒を交付するに際して、本件選挙に向けた支援の依頼をした事実は一切認められないこと等に照らせば、上記現金が陣中見舞いの趣旨であったとの認定の妨げになるものではない。

 また、被告が妻に対して現金入りの封筒を手渡した場所は、同県議の個人演説会が行われていた国信自治会館前の路上であり、同県議の支援者も会場を出て帰宅しようとしていたり、関係者が会場の後片付けをしたりしており、数メートル以内に複数人がいて、人目につく状況であった。このような状況があったにもかかわらず、被告があえて買収目的で現金を渡したというのも不自然かつ不合理である。

 なお、被告は、妻に対し、現金入り封筒を「早くしまって」などと述べているところ、検察官は、この点を捉えて被告が違法性を認識していたことの現れであると主張するようであるが、この種の演説会には他陣営の人間が紛れていることがしばしばあるので、お金のやりとりについて誤解を受けないように早くしまってと言っただけであるとの被告の説明は筋が通っており、首肯できるところである。

 上記のとおり、被告は、陣中見舞いであることを明言して妻に対し、現金を手渡したのであり、妻も被告が「陣中見舞い」という言葉を発したか否かは覚えていないものの、被告からねぎらいの言葉を掛けてもらった直後に封筒を受け取った旨証言しており、大まかな流れについては、むしろ両者の述べるところは符合している。
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