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【詳報・案里被告第29回公判】弁護側の最終弁論<9>

2020/12/24 0:14

オ カラオケ大会当日におけるやりとり

 元公設秘書は、前記のとおり、克行被告から渡された封筒を左手に抱え、右手には印刷物を何袋も抱えた状態で、被告に対し、上記封筒を上下させて示しながら、「胡子先生に渡さなければいけないんだけど、見なかった」などと言って、被告に声を掛けたと証言する。

 こうしたやりとり自体、前記の電話と同様の理由から、不自然極まりなく、虚偽の疑いが非常に濃厚であるが、仮に、このようなことがあったとしても、単に茶封筒を渡さなければいけないと伝えられただけであるから、元公設秘書から被告に対する前記の電話がない限り、元公設秘書が克行被告の指示で同市議に対し現金を渡そうとしていると認識することはできないし、仮に、前記電話があったとしても、克行被告との事前共謀の成立を認めるには足りないことは既に言及したとおりである(詳細は後に論じる)。

 また、元公設秘書は、このような行為は、同市議に対して克行被告から託された現金と思われるものを渡すことについて、被告に最終確認するためであり、仮に被告が渡さないように指示したならば渡さなかった旨証言する一方で、弁護人から、なぜ自ら直接渡そうと思ったのかと問われると、「克行先生の命令ですので、私が渡しました」と明確に答えている。このことからも明らかなように、元公設秘書は、被告ではなく、克行被告の命令に従って現金が入っているかもしれない封筒を渡そうとしていたのであるから、最終確認をするのであれば被告ではなく克行被告であるべきは当然である上、実際には、同市議に渡すか否かについて被告に何ら確認をしていないのであって(元公設秘書の証言からしても、当時、周りに人はいなかったとのことである)、その証言は破綻しているとしか言いようがない。

 さらに、元公設秘書は、会場出入り口における被告とのやりとりの際の被告の表情について、真顔になり、「あー、今こんなところで言わないでというようなふうに、私は感じました」とも証言するが、被告がスタッフである元公設秘書にあえて笑顔を振りまく必要はなく、真顔で接することに元公設秘書が違和感を抱くはずはない上、「こんなところで言わないで」という表情が一体どのような表情なのか不可解極まりないし(この点に関し元公設秘書から何の説明もなされていない)、当時、周囲に人がいなかったとすれば、不自然不合理としか言いようがない。

 これに対し、被告は、カラオケ大会会場であった大柿市民センターに到着した際、元公設秘書が乗っている赤い車両を発見し、「なぜ元公設秘書がいるのだろう」と不思議に感じつつ、一言二言、言葉を交わしたかもしれないものの、元公設秘書から早く入ってというふうに言われて中に入った旨を供述しているところ、「何で元公設秘書がいるのだろう」と思ったということは、元公設秘書が来ると知らなかった、ひいては、元公設秘書が克行被告から託されているものを同市議に渡すということをあらかじめ承知していなかったことを意味している。

 他方、同市議は、元公設秘書から茶封筒を受け取った後、出入り口から退出する被告に対し、会釈をしたものの、被告は言葉を発しなかったと証言しているところ、仮に、被告において、元公設秘書が同市議に現金入りの茶封筒を渡すことをあらかじめ承知していたとすれば、同市議と顔を合わせれば何らかの声を掛けるのが自然であるが、本来愛想のよい被告が無言であったということは、被告において、当時、特段同市議を意識しておらず、まして元公設秘書が克行被告から預かった現金を同市議に渡すといったことを全く承知していなかったことの現れである。

 以上のとおり、そもそも、被告には、元公設秘書が、克行被告から渡された現金入りの封筒を同市議に渡すという認識そのものがなかったことは明らかであり、これに反する元公設秘書の前記証言は到底信用することができない。
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