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欲しいのは「家族」の証し パートナー制度、広島市4日開始

2021/1/2 23:45

夕暮れ時、自宅マンションのベランダから景色を眺めるハヤトさん(左)とハルカさん。ようやく見つかった部屋を引き払い、広島市へ移り住む(撮影・河合佑樹)

 ▽カップル、願い込め移住へ

 性的少数者(LGBTなど)のカップルを公認するパートナーシップ制度が4日、広島市で始まる。広島県内の市町で初めて設けられるのを受け、同市への移住を決断したカップルがいる。県内で暮らす30代の自営業ハヤトさんと20代の会社員ハルカさん=いずれも仮名。2人とも戸籍上は女性だ。「家族と認めてくれる地で一緒に生きていきたい」。ささやかな、そして切なる願いを制度に託す。

 ハヤトさんの心は男性。2人は1年前、知人の会合で出会った。自然と引かれ合い、昨年夏、共に生きていくと誓った。しかし、法的な婚姻が認められていない同性カップルには、暮らしのさまざまな場面で壁が立ちはだかる。

 ハルカさんが体調を崩し、ハヤトさんが付き添って病院を訪れた時のこと。診察に同席したハヤトさんは一言も発しなかった。2人は外見上、男女のカップル。でも声でハヤトさんは女性だと分かってしまう。家族以外の同席を拒まれることを恐れたからだ。

 ハヤトさんは悔しがる。「彼女が心配だから自分も医師に病状を聞きたい。ただそれだけなのに、自分の存在を消さないといけない」

 住まいを探すのも一苦労だった。不動産業者を巡ったが「男女のカップルにしか貸せない」と断られ続けた。2人の関係に理解を示してくれた業者の紹介で、ようやく決まったマンションの家賃は月約15万円。収入から想定していた家賃の倍だった。それぞれの生命保険の受取人になることもできなかった。

 「指輪だけでは、家族の証明にはならないんです」。左手の薬指にはめた、おそろいの指輪に触れ、ハルカさんはつぶやいた。仕事の時は指輪を外している。両親にはハヤトさんとの関係を打ち明けていない。「絶対に分かってくれないと思うから」

 制度は、2人に立ちはだかる壁を全ては取り除けない。配偶者控除を受けられない、遺言書がないと遺産相続ができないなど、同性カップルには法的にクリアできないさまざまな不利益が存在する。

 それでも早ければ今春、広島市に移り住むと決めた。やっと見つけた新居を離れ、ハルカさんも仕事を辞めなければならない。そうした代償を払っても、公的な「家族」の証しが欲しかった。少しでも心をすり減らさぬよう、制度という支えが必要だった。

 2人には夢がある。ささやかでも穏やかに、幸せに暮らしたい。そして、いつか子どもを育てたい。「多くのカップルにとっての当たり前が、当たり前じゃない。でも私たちは、本当に家族なんです」(小林可奈)

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