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被災酒蔵に期待の後継ぎ 東広島・安芸津の老舗柄酒造、長男がUターン

2021/1/5 21:15
酒の仕込みが進む蔵で作業する柄総一郎さん

酒の仕込みが進む蔵で作業する柄総一郎さん

 芸南賀茂地区に大きな被害をもたらした2018年7月の西日本豪雨から6日で2年半。地域の産業も大打撃を受けたが、再建や新たな挑戦へ向けた情熱も、それぞれの地に脈打つ。東広島市安芸津町の柄(つか)酒造では、関東から家族と共にUターンした長男柄総一郎さん(37)が酒造りに携わり始めた。豪雨から立て直した家業を継ぐため、今季から「杜氏(とうじ)見習い」として修業に励んでいる。

 昨年10月、同酒造の会員制交流サイト(SNS)アカウントの更新が増え、多くの写真で彩られるようになった。帰郷直後の総一郎さんが酒造りの様子を投稿し始めたからだ。発信力を高める一方、造りはまだ素人同然。「蔵人1年生の成長記録と見てもらえれば、面白いかも」とはにかむ。

 実家は江戸後期の1848年創業。「於多福(おたふく)」「関西一」の銘柄を醸す。パートが1人いるだけで、造りから営業までの大半を社長兼杜氏の父宣行さん(65)が切り盛りしてきた。造った酒の9割が市内で消費される老舗で、映画「恋のしずく」(2018年公開)のロケ地にもなった。

 西日本豪雨では近くの川が氾濫し、酒造りに欠かせないこうじ室(むろ)は浸水。ボイラーなどあらゆる設備が壊れ、廃業寸前に陥った。住民や大学生、映画関係者らがボランティアで再建を後押し。19年1月に仕込みを再開した。総一郎さんは、そんな動きを見て「地域に立て直してもらった蔵。継いで恩返ししなければ」と決心したという。

 芝浦工業大で建築を学び、卒業後は都内の照明メーカーで働いていた総一郎さん。「光による演出も、米と水から造る酒も、限られた材料で何かを生み出す点では意外と共通している」と話す。新銘柄を生み出したい思いもあり、試したい手法が頭に浮かぶが、「まずは皆さんに残してもらった味を完璧に再現できるようにしたい」と精進する。(堅次亮平)


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