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難病の80歳女性、学校で朗読「声出る限り」
絵本を広げ、優しい口調で朗読が始まると子どもたちの目が輝く。山口県周防大島町久賀の横井醇子さん(80)は久賀小で読み聞かせボランティアを15年続ける。難病の特発性肺線維症と診断されて1年。せきや息切れに悩まされながらも「子どもの喜ぶ顔に元気をもらえる」と毎月欠かさず通う。
同小が地域住民による読み聞かせを始めた2006年度、当時の校長に手伝いを頼まれた。テレビの「まんが日本昔ばなし」が好きで「(語りの)市原悦子さんみたいな調子でやればいいんだ」と快諾。以来、ずっと2年生を担当する。
かつての暮らしを知ってもらおうと日本の昔話を選ぶことが多い。かまどでの飯炊きや稲の手植えなど自らの体験も交える。「私も先生から物語を聞かせてもらうのが楽しみだった。知識を身に付けるだけでなく情緒も育んでほしい」。絵本は図書館で借りるだけでなく、これぞと思えば広島市の書店で購入。歯科衛生士の経歴を生かし歯磨きの絵本を読んだこともある。
難病と分かったのは19年12月。日常生活で息苦しさを感じるようになり判明した。その後インフルエンザにかかって症状が進行。今は思うように声が出ず、途中でせき込むこともある。読み聞かせ前には「病気でゆっくりしか読めないの。ごめんね」と伝える。子どもたちの「分かりました」との元気な返事に「うれしいね」と目を細める。
昨年最後の12月9日にはクリスマスにちなんだ絵本で児童19人を物語の世界にいざなった。「話が面白いから、いつも楽しみ。クリスマスにはサンタさんにボールをもらうんだ」と田村岳之君(8)。子どもたちは想像の翼を広げた。
ボランティア6人の最年長だ。横井さんに誘われて数年前から加わった鳥村節子さん(75)は「地域や子どもたちを愛しているのが伝わってくる」と語る。
病気のため、自転車で学校まで行くのが難しくなった。新型コロナウイルス禍だが、今は介護タクシーで通い続ける。「道で会ったらあいさつしてくれる良い子ばかり。いつまでできるか分からないけど、声が出る限り頑張りたい」(余村泰樹)
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