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渋滞解消、高架に懸ける 広島都市圏東部連続立体交差
物流や移動の基盤となる道路・線路、にぎわいの拠点となる集客施設、治水や利水で活用されるダム…。中国地方では、2021年もさまざまな公共施設の整備が進められる。私たちの暮らしや地域を変える大型事業の現場を上空から望み、現状や課題を点検する。
■期待する地元
広島都市圏東部のJR線を高架化する連続立体交差事業。事業費圧縮のための高架区間短縮と、それに対する住民たちの反発などで見直しが重ねられ、広島市南区、安芸区、広島県府中、海田両町の計約5キロを対象区間とすることが18年に決まった。都市計画決定されて約20年。向洋駅(府中町)の仮駅舎を設けるなど21年は、事業主体の県と市が36年度ごろの完成に向けて工事を本格化させる年となる。
「朝や夕方の通勤、通学の時間帯を中心に、線路の遮断機が下がりっぱなしだ」。広島市安芸区の船越地区連合町内会会長の倉増治男さん(78)はため息をつく。地区にある船越踏切などの踏切には山陽線と呉線の線路が4本走り、貨物列車も通る。一帯の道路は交通量が多く、踏切での渋滞が常態化している。
連続立体交差事業は、JR山陽線3・9キロ、呉線1・2キロの線路を高架にする。多くの道路が線路の下をくぐる形になり、踏切は山陽線で12カ所、呉線で4カ所の計16カ所なくなる。船越地区の3カ所も対象だ。倉増さんは「渋滞が解消され、開発も進んで地域が活性化するだろう」と期待する。
県都市環境整備課は、線路で分断されている多くの箇所で人の流れが活発になるとみる。踏切横断に伴う交通事故が減る利点もあるとする。
海田市駅(海田町)や向洋駅の周辺では、町などが土地区画整理事業を進め、駅前が様変わりしつつある。事業に伴って海田町役場は立ち退きとなり、旧県海田庁舎の敷地に移転する。
■17年かけ工事
JR線を高架にする工事は20年度着工で、36年度ごろまでの17年間にわたる長期事業になる。工事は大きく東西に2区間に分け、向洋駅を含む的場川西踏切(安芸区)より西側の2・0キロ区間からI期工事を始めている。
鉄道工事はJR西日本が県、市から受託する形で担い、20年10月から始めた。現在の4本の線路の北側に仮線路を敷き、いったん列車の通行を仮線路に移した上で南側から順に高架橋を建設していく。21年は、工事エリアを囲うフェンスを設置し、仮線路の敷設に向けた向洋駅の仮駅舎や渡線橋を設ける作業を進める。
仮線路を敷設して踏切間の距離が長くなる場所では途中に遮断機を付け、一時待機場所を設ける。鹿籠(こごもり)踏切(府中町)や青崎第10踏切(同)などが該当する。I期工事の完成は30年春ごろを見込む。
海田市駅を含む東側のII期工事の計3・1キロ区間は27年度ごろ着工し、36年度ごろの完成を目指している。線路の高架化に伴い、海田市駅と向洋駅は建て替えられる。
■相次いだ変更
連続立体交差事業は、高額な事業費がネックとなり、事業内容の見直しが繰り返されてきた。
事業は1991年、県と市、府中、海田両町の4者が推進組織をつくり動きだした。99年の都市計画決定では6・3キロを高架化し、事業費は当時の算定で960億円となる計画だった。
しかし厳しい財政状況を受けて県と市は当初案を縮小。海田町と安芸区船越地区の高架化を見送る案(高架区間2・0キロ)を13年に公表した。当時、事業費は570億円に圧縮した。
この案に海田町が難色を示したため、県、市は同町の一部を高架化する見直し案(同4・0キロ)を15年に提示。さらに、高架化を見送られたままの船越地区の住民の要望などを踏まえ、同地区の大部分も高架化する再検討案(同約5キロ)に変え、18年に4者で合意した。総事業費は915億円を見込んでいる。(石井雄一)
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